artscapeレビュー

その他のジャンルに関するレビュー/プレビュー

横浜にぎわい座十二月・正月興行連続公演「年末年始志ん輔三昧」年始の会

会期:2016/01/09

横浜にぎわい座 芸能ホール[神奈川県]

久しぶりに野毛に寄って、横浜にぎわい座へ。古今亭志ん輔、古今亭駒次ら、三人が出演したが、落語は初心者に対しても、笑えるかどうかという判断から、うまいかどうかがわりと簡単に感じられる話芸であり、恐ろしいジャンルだ。なお、この建物のデザインがひどい。エントランスの吹抜けとか、手抜きのデザインである。が、こうした建築のデザインはリテラシーのハードルが高く、一般の人はあまり気づかないのだろう。

2016/01/09(土)(五十嵐太郎)

夷酋列像─蝦夷地イメージをめぐる人・物・世界─

会期:2015/12/15~2016/02/07

国立歴史民俗博物館[千葉県]

夷酋列像(いしゅうれつぞう)とは、松前藩の家老、蠣崎波響(かきざきはきょう)(1764-1826)が描いたアイヌの指導者たち12人の肖像画。本展は、それらの全点と関連する資料を一挙に展示したもの。比較的小規模な企画展だが、絵画のなかに描かれたアイヌの表象と、彼らが身につけた装飾品の実物が併せて展示されているため、知られざるアイヌの世界を垣間見ることができる。
日本美術史において北海道はある種の空白地帯である。そこは民族学的にはアイヌが先住しており、地政学的には「蝦夷」として長らく周縁化されてきたからだ。しかもアイヌには「北海道旧土人保護法」(1899~1997)により財産を奪われ文化を否定されてきたという背景がある。「日本」からも「日本美術史」からも排除されたアイヌの造形表現は、依然として解明されていないことが多い。したがって夷酋列像は類稀なアイヌの表象として希少価値をもつ。
注目したのは、その人物表現。いずれも一見して異様な風貌として描かれているのがわかる。一本につながった太い眉毛や口元を覆い隠すほどの濃い髭、そしてずんぐりとした巨体に不敵な印象を残す三白眼。なかにはラッコの毛皮を敷物にしたり西洋風の外套を羽織ったりしている者もいるから、当時のアイヌが文化的にも経済的にもロシアと密接な関係にあったことが伺える。
しかし、もっとも特徴的なのは、それらの人物像の異様さが陰影法によって増幅されている点だ。眼の下はいずれも色彩が濃いため面妖な印象が強いし、とりわけ脛は陰影を明確に描き分けることで筋肉の剛性を立体的に強調している。このような描写法は、基本的には陰影や濃淡を排除しながら平面性を一貫させる大和絵の画風とはじつに対照的だが、どちらかといえば現在のアニメーションに近い。北海道博物館の学芸員、春木晶子によれば、「陰影(法)は、自分たちと異なる者を示す記号」(図録、p.13)だったのだ。
他者としてのアイヌの表象。夷酋列像はアイヌ自身によるアイヌの肖像画ではなかった。蠣崎波響が松前藩の家老だったように、夷酋列像は和人によって表象されたアイヌのイメージである。事実、そこに描き出された12人のアイヌの指導者たちは、1789年に和人の圧政に耐えかねたアイヌが蜂起した「クナシリ・メナシの戦い」で、争いを終息させるために松前藩に協力した者たちだった。つまり夷酋列像とは、アイヌという他者の表象にとどまらず、野蛮な彼らを支配下に置く松前藩の統治能力を訴える、じつに政治的な絵画だった。会場には時の天皇が夷酋列像を謁見したという記録や、諸藩による模写も展示されていたから、この絵画の政治性は全国的に行き届いていたようだ。
かつてエドワード・サイードが『オリエンタリズム』で指摘したように、西洋近代は他者としての東洋を一方的に表象することで西洋の知の体系を再生産してきた。むろん日本もまた西洋に表象されてきたわけだが、夷酋列像が示しているのは、その一方で、日本が他者としてのアイヌを表象する権力を行使してきたという事実である。すなわち日本は西洋に表象される客体であり、同時に、アイヌを表象する主体でもあった。ここから類推しうるのは、単一民族国家として信じられがちな「日本」が、じつはさまざまな民族が混在した群島であり、そこには西洋と東洋の不均衡な関係性と同じように、表象をめぐる権力関係が随所で入り乱れているという仮説である。これを実証する余裕はないが、例えば「アイヌ」を「沖縄」に置き換えてみれば、その妥当性はある程度実感できよう。
夷酋列像はアイヌの生態をロマンティックに描いた記録画ではない。それは、歴史の深淵から現在のポスト・コロニアリズム的な状況を照らし出す、きわめてアクチュアルな絵画なのだ。

2016/01/07(木)(福住廉)

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肉筆浮世絵の美──氏家浮世絵コレクション

会期:2016/01/01~2016/02/14

鎌倉国宝館[神奈川県]

製薬会社の経営者であった氏家武雄氏が蒐集した肉筆浮世絵のコレクション展。戦前期から日本美術を収集していた氏家氏は、戦後浮世絵、それも1点ものの肉筆画の蒐集に専念することを志す。1974年10月1日、鎌倉国宝館内に財団法人氏家浮世絵コレクションが設立され、集めた作品は鎌倉市と協力して保存公開されることになった。この財団設立から40年を迎えて2014年から松坂屋美術館、いわき市立美術館と巡回してきた企画が本展である。分業によって制作される刷り物とは異なり、画家自身の筆遣い、色遣いが現われていることが本コレクションの特徴だ。出展作には歌麿、春章、師宣もあるが、数の点でも印象の強さでも北斎。北斎美人画の代表作といわれる「酔余美人図」(1807年頃)、晩年の武人画「雪中張飛図」(1843年)等々に魅せられる。興味深い史料としては、松楽斎眉月「役者絵(かおとはな)」(1812年)、清谷「役者絵(すがたづくし)」(1804 30年頃)がある。いずれも役者の顔の描き分けが様式化されておらず、個性的なところが見ていて楽しい。司馬江漢「江之島富士遠望図」(1807年)は、実際には海岸からは江の島の右手に見えるはずの伊豆と富士を島の背後に配しているところ、その写実的な表現とのギャップが面白い。[新川徳彦]

2016/01/03(日)(SYNK)

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初期シェーカー聖歌:レコード・アルバムの上演

会期:2015/12/22~2016/12/23

スパイラルホール[東京都]

ウースター・グループ「初期シェーカー聖歌」@スパイラル。国内外の近代宗教建築を調べていたので、シェーカー教の音楽を聴きにいく。シェーカー教は、ミニマルな機能主義的なデザインの家具で知られているが、音楽は初めて聴いた。レコード・アルバムの上演という形式で、再現歌唱であり、演劇のような不思議な舞台だった。もとは前衛を狙ったものではない聖歌だが、昨今の主流との違いから斬新かつ個性的に感じる。

2015/12/23(水)(五十嵐太郎)

駅弁むかし物語

会期:2015/12/08~2016/03/21

旧新橋停車場 鉄道歴史展示室[東京都]

明治期の土瓶や陶製容器から、僕の世代だと懐かしいポリ茶瓶までを紹介する。以前にここで鑑賞した野球場と鉄道の企画展も印象的だったが、今回もユニークな内容だった。

2015/12/18(金)(五十嵐太郎)

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