artscapeレビュー
その他のジャンルに関するレビュー/プレビュー
NIPPONパノラマ大紀行~吉田初三郎のえがいた大正・昭和~
会期:2014/07/26~2014/09/15
名古屋市博物館[愛知県]
吉田初三郎は鳥瞰図の絵師。大正から昭和にかけて全国の都市や景勝地の鳥瞰図を、およそ3,000点以上描き残した。本展は、初三郎についての研究者である小川文太郎のコレクションのなかから200点以上を厳選して展示したもの。会場には鳥瞰図のほか、観光旅行のポスターや時刻表、絵葉書など、関連する資料もあわせて発表された。鳥瞰図の鮮やかな色合いがじつに美しい。
初三郎の鳥瞰図は日本の近代化と併走していた。全国各地に鉄道が敷設され、鉄道による観光旅行が普及すると、各地で路線図と景勝地をあわせて描写した案内図の需要が高まった。初三郎の観光鳥瞰図を見ると、その対象が北は北海道から南は九州まで、文字どおり全国津々浦々に広がっていたことがわかる。初三郎の眼は、はるか上空から近代化していく日本列島を見下ろしていたのだ。
ただ、初三郎の鳥瞰図は近代絵画からは除外されてしまった。「絵画」ではなく「地図」として制度的に振り分けられたのだ。だが、よく見ると初三郎の鳥瞰図は必ずしも科学的な真正性によって描かれているわけではないことに気づく。景勝地の滝を極端に大きくデフォルメしたり、鉄道の路線をあえて一直線に単純化したり、初三郎はつねに彼の創意を工夫しながら絵に導入していたのだ。そもそも鳥瞰図という表現形式のなかにすら、必ずしも鳥の眼で見た光景を正しく反映しているわけではないという点で、想像的な次元が含まれていると言わねばなるまい。
吉田初三郎による観光鳥瞰図は単なる「地図」ではない。それらは、初三郎という類まれな絵師による、確かな表現なのだ。近代絵画が見失った、ありえたかもしれない、もうひとつの「絵画」が潜在しているのである。
2014/08/30(土)(福住廉)
夏祭り SUMMER STATION、Pokémon the movie XY展
会期:2014/07/19~2014/08/31
六本木ヒルズ アリーナ[東京都]
六本木ヒルズの地上は、大阪で目撃したドラえもん軍団が占拠していた。記念写真でにぎわっている。アリーナでは、大盆踊り大会が開催されており、出店がいっぱい。イベントでゴジラの上半身が屋外で展示されていた東京ミッドタウンに比べて、こちらが庶民的な雰囲気に変わったことを実感する。また展望台にあがると、ポケモン展が自動的に見られるようになっており、カフェが大人気だった。10年ほど前に京都国立博物館でスターウォーズ展が巡回したときは衝撃だったが、今やサブカル系の展覧会が、もはやめずらしい企画でもなんでもなく、本当に日常化したと思う。
2014/08/23(土)(五十嵐太郎)
プレビュー:平成知新館オープン記念 京へのいざない
会期:2014/09/13~2014/11/16
京都国立博物館 平成知新館[京都府]
長年完成が待たれていた京都国立博物館の新しい平常展示館=平成知新館が、ついにオープン。そのこけら落としとして、同館所蔵の名品400点以上(うち、国宝50余点、重要文化財110余点)を1期・2期に分けて展示する。日本史や美術の教科書でお馴染みの《伝源頼朝像》や雪舟筆《天橋立図》、狩野永徳筆《洛中洛外図屏風》、如拙筆《瓢鮎図》などの名画をはじめ、絵画、書跡、彫刻、工芸、考古の名品が並び、さながらオールスター戦のごとき華やかさだ。谷口吉生が設計した建物とともに、この秋関西美術界で最注目のトピックとなるだろう。
2014/08/20(水)(小吹隆文)
プレビュー:Art trip vol.01 窓の外、恋の旅。──風景と表現
会期:2014/09/27~2014/11/30
芦屋市立美術博物館[兵庫県]
「風景」をテーマに、芦屋ゆかりの作家である小出楢重、吉原治良、村上三郎、ハナヤ勘兵衛、そして現在活躍中の下道基行、林勇気、ヤマガミユキヒロの作品を展覧。さらに、谷川俊太郎の詩を彼らの作品とともに展示する。絵画、写真、映像、詩をひとつの会場に並べることで、近代と現代の風景表現の変遷と差異、美術作品と詩の共鳴を味わいたい。
2014/08/20(水)(小吹隆文)
成田享 美術/特撮/怪獣 ウルトラマン創造の原点
会期:2014/07/19~2014/08/31
富山県立近代美術館[富山県]
富山県立近代美術館の「成田亨 美術/特撮/怪獣」展は、過去最大の回顧展だろう。武蔵美を出て、当初はアーティストをめざしつつ、『ゴジラ』などを契機にウルトラマンの怪獣デザインを手がけるようになり、晩年は古今東西の怪獣を描くことに捧げた生涯を紹介する。ウルトラマン・シリーズの怪獣は、筆者にとっては、生まれて初めて興味をもった造形であり、最初に影響を受けたアーティストと言えるかもしれない。
2014/08/17(日)(五十嵐太郎)