artscapeレビュー
その他のジャンルに関するレビュー/プレビュー
龍野アートプロジェクト2013 刻(とき)の記憶
会期:2013/11/15~2013/11/24
ヒガシマル醤油元本社工場、龍野城、聚遠亭、他[兵庫県]
兵庫県南西部に位置する、たつの市の城下町を舞台に行なわれたアート・イベント。3年目の今年は、過去2回の出品者に、ミロスワフ・バウカ、松井智惠、さわひらきを加えた21作家が出品。醤油会社の元工場や資料館、古民家、龍野城、図書館、カフェなどで展示が行なわれた。今年は全国各地で大規模な地域型アートイベントが行なわれたが、「龍野~」は、規模や知名度の点で決してメジャーとは言えない。しかし、作品・展示・ホスピタリティが上質で、歴史ある城下町の魅力も手伝って素晴らしい仕上がりとなった。「瀬戸内」や「あいち」と比べても、決して引けを取っていないと思う。来年以降の予定は不明だが、願わくば継続してほしい。現在のレベルで回を重ね、適切な広報活動を行なえば、きっと地域の文化資産になるはずだ。
2013/11/17(日)(小吹隆文)
フェスティバル/トーキョー13「四谷雑談集」
会期:2013/11/09~2013/11/24
[東京都]
フェスティバル/トーキョー13がスタートした。中野成樹と長島確による「四谷雑談集」に参加した。四谷怪談の元ネタに関する「TALK」、実際に四谷を歩く「WALK」、屋敷跡にたどりつき「PARK」で解散するというプログラムである。お岩さんという強力な物語装置を契機に、想像力を駆使し、東京の街が江戸にタイムスリップしていく。一種のクリエイティブ・ツーリズムのようでもあり、坂道が多いエリアなので、ブラタモリ+東京スリバチ学会のようでもあるが、失踪したお岩の恨みから、30年にわたり、関係者が十数人も亡くなった300年以上前の物語を想いながら歩くのは、不思議な体験だった。やや曇った天気も、雰囲気を盛り上げる。今年のコンセプト「物語を旅する」そのものである。
2013/11/09(土)(五十嵐太郎)
あなたの肖像─工藤哲巳 回顧展
会期:2013/11/02~2014/01/19
国立国際美術館[大阪府]
1994年以来、約20年ぶりとなる工藤哲巳の大回顧展。前回も大規模だったが、今回は総点数約200点と一層のスケールアップを果たしている。その主因は、前回はフォローし切れなかった1950年代・60年代の作品が数多く出品されたことだ。また、20年の歳月が工藤の再評価を進め、国内外の美術館で彼のコレクションが形成されるようになったのも大きい。帰国作品のなかには、《インポ分布図とその飽和点における保護ドームの発生》(ウォーカー・アート・センター蔵)のように、半世紀ぶりに国内公開されたものもあった。このように充実した内容のおかげで、本展では、反芸術から滞欧時代を経て1980年代以降に至る彼の業績をほぼ概観できる。同時に、工藤流ニヒリズムとでも言うべき思想の変遷を窺えるのも見どころだ。他には、大著となった図録の充実ぶりも特筆しておきたい。
2013/11/01(金)(小吹隆文)
あいちトリエンナーレ2013 記者座談会 上・下(『中日新聞』2013.10.28)
トリエンナーレの終了翌日とその次の日、二日間にわたって、『中日新聞』に、五名の記者による総括の座談会が掲載された。地元の批判的な意見もあることを伝えようとしたものと思われるが、編集がバランスを欠き、全体としてトリエンナーレの酷評に近い印象を与えるものだった。むろん、作品や内容についてはあれこれ言われてきたし、今回のようなテーマだと、そういう賛否が出るのは当然だと思っていたが、残念ながら、この座談会は事実誤認、取材不足、個人的な印象による決めつけが多く、看過できない。特に記者E(個人名は特定されていない)は、著しく誠意を欠いたこき下ろしを繰り返し、展示のレビューを装った国際芸術祭の全否定である。ゆえに、筆者はtwitterの連投を通じて、反論を行ない、togetterでも5万に近い閲覧数となり、大きな反響を呼んだ(http://togetter.com/li/583137)。またパフォーミングアーツ統括プロデューサーの小崎哲哉も、10の事実誤認を指摘する「中日新聞5記者への公開質問状」を「Realtokyo」のウェブサイトに掲載した。なお、その後、筆者は『中日新聞』に反論を書けるということで寄稿したが、書き直しを要求され、向こうの要望に合わせて、反論を修正するのもおかしいと考え、原稿の掲載をあきらめた。
2013/10/29(火)(五十嵐太郎)
喫茶店「丘」
[愛知県]
噂に聞いていた岡崎のディープな喫茶店「丘」にて、昼食。masayoshi suzukiギャラリーのすぐ近くである。なるほど、これは大竹伸朗のインスタレーションが内装になったような空間だ。広くはない店内で、映画音楽とヴァン・ヘイレンが同時に鳴っていたのも驚きである。店主が手づくりでつくり上げた、アート作品としての喫茶店だ。
2013/10/24(木)(五十嵐太郎)