artscapeレビュー
パフォーマンスに関するレビュー/プレビュー
フェスティバル/トーキョー13 永い遠足
会期:2013/11/17~2013/11/25
にしすがも創造舎[東京都]
F/T13のにしすがも創造舎におけるサンプル「永い遠足」を観劇。廃校の体育館が舞台になっており、それを最大限生かした演出だった。回転しながら舞台の場面を変えていく電気自動車ほか、自転車やローラースケートでの運動など、舞台美術の機動力に感心した。それにあわせて、多数貼付けられた物語も、めまぐるしく変化する。
2013/11/17(日)(五十嵐太郎)
フェスティバル/トーキョー13 ラビア・ムルエ連続上演 雲に乗って
会期:2013/11/16~2013/11/17
東京芸術劇場シアターイースト[東京都]
F/T13のラビア・ムルエ「雲に乗って」を観劇。レバノンの内戦で頭を銃撃され、記憶、言語、認識に障害をもった弟が出演し、片手で机の上のDVD等を操作し、それをスクリーンに再生しつつ、自らも語るという演劇の形式である。強烈な事実をもとに、幾らかの虚構も混ぜて、表象の可能性/限界を鋭く問う。続いて見た、ラビア・ムルエの映像《ピクセル化された革命》がよかった。約20分の講義形式で、携帯で撮影する人を銃撃する、狙撃手のネット上の映像をもとに、ダブルシューティング問題を考察。本当に頭のいい人。その鮮やかさは冴えたヴィリリオのよう。レバノンつながりでは、ワリッド・ラードの作品も想起させる。
2013/11/17(日)(五十嵐太郎)
宮本亜門(演出・振付)『メリリー・ウィー・ロール・アロング──それでも僕らは前へ進む』
会期:2013/11/01~2013/11/17
銀河劇場[東京都]
門外漢ではあるのだけれど、珍しくミュージカルを見に行ったので、印象を記しておこうと思う。本作は、もともと1934年にジョージ・カウフマンとモス・ハートによってつくられた同名作を、1976年から1957年に舞台をかえてジョージ・ファースが脚本をスティーヴン・ソンドハイムが曲を書いてリメイクした、バックステージもののアメリカン・ミュージカル。「1976年から1957年」と書いたが、この作品の際立った特徴は時間が逆行するところだ。主たる登場人物は2人、ハリウッドのプロデューサー(フランク:柿澤勇人)とニューヨークで活躍する劇作家(チャーリー:小池徹平)。フランクは成功を収めているがいまの成功はかりそめに過ぎないと絶望しており、いまとなっては困難なのだが、本当は若いころに一緒に作品をつくったチャーリーとやり直したいと思っている。華やかだが虚しさの漂うパーティ場面から、物語は2、3年の間隔で過去へと遡行してゆく。テープを巻き戻すように2人がどうして仲違いをしてしまったのか、あるいはかつてはどんなに仲の良い2人だったのか、どんな若々しい希望に溢れた夢を語り合っていたのか、約20年分の2人の過去が次第にわかってくる。ミュージカルらしい強引で生真面目な構造は不可逆的で、引き返せないジェットコースターのよう。キャンピー(わざとらしくておかしい)だけれど、よくできていて、とくにそう思わせるのは、青春期から中年期へと進む普通の進行であれば、希望が絶望に変わるだけの話が、逆に進むことで、絶望から希望の話に錯覚してしまうところだ。いや、本当は絶望への物語なのでそう錯覚すること自体皮肉めいているのだけれど、〈内面の沸き立つ思いがあふれてきて思わず歌い踊ってしまう〉というミュージカル独特のフォーマットを活かすには、希望へと進んで行く趣向はきわめて合理的なはず。けっして明るい話ではないのに、見終わった感触がいい、でも、たんにハッピーエンドではない、という絶妙な味わいが生まれていた。正直、小池徹平や高橋愛といった芸能人や、その他の歌手、ミュージカル俳優たちの演技の質はよくわからない。メロディーを歌いこなせていないのではと思わされるところも目立った。プロジェクション・マッピングを用いた舞台美術はすっきりとしていて、またミュージカルの虚飾性にフィットしているとも思った。
2013/11/13(水)(木村覚)
フェスティバル/トーキョー13 オーバードーズ:サイコ・カタストロフィー
会期:2013/11/09~2013/11/13
池袋西口公園[東京都]
東京芸術劇場のアトリウムには、椿昇の巨大バルーンによる、金色の牛の頭をかたどる作品が浮かぶ。池袋の西口広場では、船のような、尖った切妻屋根の民家のような、竹による大きなセットが水面の上に組まれ、男たちがよじ登って「オーバードーズ:サイコ・カタストロフィー」が催された。これは1883年のクラカタウ火山の噴火と津波で3万6千人が亡くなった出来事に着想をえて制作された神話、儀式的な作品である。見るからに危険な身体運動ゆえに、緊張がゆるむことがない、エネルギッシュなパフォーマンスだ。あいちトリエンナーレのジェコ・シオンポも、インドネシアだったが、彼らも壮大でパワフルである。
写真:上=オーバードーズ、下=椿昇の巨大バルーン
2013/11/09(土)(五十嵐太郎)
フェスティバル/トーキョー13「四谷雑談集」
会期:2013/11/09~2013/11/24
[東京都]
フェスティバル/トーキョー13がスタートした。中野成樹と長島確による「四谷雑談集」に参加した。四谷怪談の元ネタに関する「TALK」、実際に四谷を歩く「WALK」、屋敷跡にたどりつき「PARK」で解散するというプログラムである。お岩さんという強力な物語装置を契機に、想像力を駆使し、東京の街が江戸にタイムスリップしていく。一種のクリエイティブ・ツーリズムのようでもあり、坂道が多いエリアなので、ブラタモリ+東京スリバチ学会のようでもあるが、失踪したお岩の恨みから、30年にわたり、関係者が十数人も亡くなった300年以上前の物語を想いながら歩くのは、不思議な体験だった。やや曇った天気も、雰囲気を盛り上げる。今年のコンセプト「物語を旅する」そのものである。
2013/11/09(土)(五十嵐太郎)