2018年01月15日号
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artscapeレビュー

紫、絵画。渡邉野子

2016年11月01日号

会期:2016/09/24~2016/10/22

Gallery G-77[京都府]

紫を基調とした色彩と激しい筆致の抽象画で知られる渡邉野子。「対比における共存」をテーマとする彼女にとって、赤と青が混ざった紫はテーマを体現する色である。また新作では金と銀を新色として使用しており、画面の質感が以前の作品とは少し違って見えた。抽象画というジャンルは、現在の絵画シーンのなかで沈滞気味と言える。その原因は、表現方法が出尽くしたこともあるだろうが、それ以上に現実社会との接点を疎かにしていたからではないか。本展のチラシに記された文面を見てそう感じた。その文面とは、「東洋と西洋のはざまにあり、不安定にそして肯定的にたたずむ渡邉の線は、世界において異質なものや多様な理念が混在し衝突する社会に育ち、混沌とした今と将来に生きる世代の作家としての存在理由を象徴しています」。まるで現在の国際情勢を語っているかのようだ。そして、こうした社会のなかで抽象画を描く理由を端的に示したとも言える。もちろん、現実の諸問題とコミットするしないは個々の自由である。筆者が言いたいのは、パターン化した思考から抜け出し、新たな視点を得ることで、抽象画に新たな存在意義を与えられるのではないかということだ。時代が再び抽象画を要請するかもしれない。このテキストを読んで大いに勇気づけられた。

2016/09/27(火)(小吹隆文)

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