2018年07月15日号
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artscapeレビュー

松ノ井覚治の建築ドローイング─ニューヨークで学んだボザール建築

2016年11月01日号

会期:2016/10/03~2016/10/21

京都工芸繊維大学美術工芸資料館[京都府]

美しい建築ドローイングの数々に、思わずため息が出る。松ノ井覚治(1896-1982)は、1920年代のニューヨークで活躍した珍しい経歴をもつ建築家。1918年に早稲田大学理工学部建築学科を卒業後、アメリカに渡る。帰国した1932年には、ヴォーリズの事務所にも籍を置いた。ところで同大学の同級生が、村野藤吾(1891-1984)である。村野は拠点を大阪に移し、渡辺節の事務所に勤めた。一方、松ノ井はニューヨークの大手の建築事務所で働きながらコロンビア大学に学ぶ。1928年には、設計主任としてマンハッタン銀行本店(ウォール・ストリートの超高層ビル)の建て替えの仕事に携わるまでになったという。本展に展示されるのは、彼が大学に在籍しながら、ボザール・インスティチュート・オブ・デザイン(BAID)宛に応募した課題(審査結果は建築雑誌の誌面に公開された)。同団体は、パリのエコール・デ・ボザールによる「ボザール様式」を規範とする教育を行なう、当時の建築教育にあっては重要な機関であった。そのとおり、ドローイング作品には見事に描かれ着彩された、古典的な設計意匠を見て取ることができる。また京都工芸繊維大学美術工芸資料館 には、村野藤吾の充実した資料と研究実績がある。展示された寄贈品を巡る「もの」を通して、松ノ井と村野の間に流れるあたたかな友情の物語までも伏線として示される、何とも素敵な展覧会。[竹内有子]

2015/10/15(土)(SYNK)

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