2018年01月15日号
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artscapeレビュー

サントリー美術館新収蔵品 コレクターの眼 ヨーロッパ陶磁と世界のガラス

2017年02月01日号

会期:2017/01/25~2017/03/12

サントリー美術館[東京都]

近年サントリー美術館に寄贈された2人のコレクターのコレクションを紹介する展覧会。ひとつは、野依利之氏によるヨーロッパの陶磁器で、もうひとつは故・辻清明氏による古代から近代にかけての世界のガラス器だ。
「ヨーロッパ陶磁」と聞いて筆者が想像していたのはマイセンやセーブルなどの高級磁器だったのだが、野依氏の寄贈品はマヨリカウェアやデルフトウェアなどの錫釉陶器が中心。展示を見て少々驚いたと同時に、日本でヨーロッパの錫釉陶器をまとめて見る機会はそうそうないので興奮する。展示でとても興味深いのは、意匠と技術の変遷。16世紀から17世紀のイタリア錫釉陶器にはヨーロッパ的な意匠や紋章が施されたものが多い。スペインの陶器にはイスラムの影響が色濃く見える。他方で、デザインの形式には中国磁器──とくに芙蓉手──が影響している。これがデルフトウェアになると器の形も、意匠も形式も中国磁器を模したものが中心になる。1602年に東インド会社を設立したオランダは、アジアとの貿易で大量の磁器を輸入するようになり、そのデザインを模した陶器がたくさんつくられたのだ。東洋磁器の模倣がより顕著になるのは17世紀半ば。中国の内乱でヨーロッパへの磁器輸入が途絶え、その代替品としての需要が増大したからだ。磁器の原材料であるカオリンが得られないため(知られていなかったため)製品はあくまでも陶器であったが、次第に素地は薄く、釉薬は白くなり、酸化コバルトで絵付けした上に透明釉を掛けた製品はかなりよく染付磁器を再現している。色絵磁器を模した製品もなかなかの出来である。ただし、野依氏のコレクションは置物、装飾陶器が中心なのでその質が高いということに留意しておく必要がある(デルフトの主要な製品は実用的で簡素な食器類だ)。寄贈品には他にエミール・ガレの陶器も(これも錫釉だ)。
ガラス器を寄贈した辻清明氏のコレクションは古代ローマからオリエント、中国、ヨーロッパ、日本の和ガラスにまで及ぶ。展示品を見ると、凝った造形よりもガラスという素材、質感に魅力を感じていたのではないかと思われる。
ヨーロッパ陶磁を寄贈した野依氏はガレやドームなどアール・ヌーボーのガラスを扱う美術商。ガラス器を寄贈した辻清明氏は陶芸家。ガラス商が陶磁を愛し、陶芸家がガラスを愛でたというのは、面白い。どちらのコレクションも見ていて幸せな気持ちになるのは、作品に対するコレクターの愛が見えるからだろうか。
なお、本展ではすべての作品の写真撮影が可能となっている。[新川徳彦]

2017/01/24(火)(SYNK)

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