artscapeレビュー
モダン百花撩乱──大分世界美術館
2015年07月01日号
会期:2015/04/24~2015/07/20
大分県立美術館[大分県]
「大分が世界に出会う、世界が大分に驚く『傑作名品200選』」と銘打ち、大分県立美術館の開館記念展Vol.1として開催された展覧会。会場は5部構成。第1章「モダンの祝賀」、第2章「死を超える生・咲き誇る生命」、第3章「日常の美 人と共に生きる〈もの〉と〈かたち〉」、第4章「画人たちの小宇宙」、第5章「視ることの幸福」と章立てはなかなか大掛かりである。
出品作品はじつに多岐におよぶ。大分の画家、片多徳郎の抽象画にはじまり、ピカソ、マティス、ダリ、ミロ、カンディンスキー、ポロックといった海外の巨匠たちから青木繁、坂本繁二郎、白髪一雄、吉原治良そして奈良美智といった日本人の画家たちまで絵画だけをとってもまさに百様だ。それにウィリアム・モリス、民芸、北大路魯山人、長次郎、三宅一生、イサムノグチらの工芸やデザインが加わって、撩乱と呼ぶにふさわしい賑わいを見せる。これほどの作品群をいかに見せるのか。会場では、予想もしない大胆な組み合わせの展示があちこちでみられた。第3章の会場の一角で、濱田庄司の鉢からふと目を移して尾形乾山の猪口にでくわしたときには不意をつかれた思いがした。そうかと思えば、第2章の会場では油絵の展示のなかに、石内都の写真作品《ひろしま》シリーズの数点が違和感なく佇んでいる。一度に見るのは勿体ないほどのラインナップだが、長谷川等伯の《松林図屏風》、雪舟の《山水図〈倣玉潤〉》、千利休の花入など、期間限定の展示替えの作品もあるというから何度でも足を運びたくなる。
大分県立美術館の館長に就任した、新見隆氏によると、視るということは野蛮な行為らしい。会場を巡り次から次へと視界に映る作品を追いながら、まだ視られる、もっと視たいと勇むような思いになったのは、知らず知らずに視ることへの本能的な欲望を刺激されていたからかもしれない。[平光睦子]
2015/06/05(日)(SYNK)