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尾仲浩二/本山周平「熊本応援写真集展」

2016年11月15日号

会期:2016/10/08~2016/10/09、2016/10/15~2016/10/16

ギャラリー街道[東京都]

尾仲浩二と本山周平は、2011年3月11日の東日本大震災の直後に、熊本県芦北町で開催された「あしきた写真フェスタ」に参加していた。この地域起こしの写真イベントには、たまたま僕もシンポジウムの講師として参加していたので、当時の雰囲気はよく覚えている。暗く、重苦しい雰囲気の東京とは違って、八代海に面した芦北には陽光が溢れ、開放的な気分が漂っていた。2人の写真家はイベントのあとに本山の実家がある八代市にも滞在し、熊本県内の風景を撮影した。
ところが、それから5年後の2016年4月14日と16日に、熊本一帯を震度7の地震が襲い、八代を含めた地域に大きな被害が発生した。当時展覧会のためにベルギーのブリュッセルに滞在していた尾仲は、「居ても立ってもいられずに」本山にメールを送り、それをきっかけに写真集を刊行し、売り上げを被災地に寄贈するというプロジェクトがスタートする。町口覚が造本を担当し、印刷会社のイニュニックの全面協力を得て、9月1日にその写真集『あの春 2011.3』が完成した。
本展はそのお披露目展であり、尾仲のカラー作品13点と本山のモノクローム作品14点(ほかに2001年に福岡県直方で撮影された尾仲の写真10点)が展示されていた。モノクロームとカラーによるそれぞれの表現の微妙な違いも興味深いが、より重要なのは彼らの写真が「撮れてしまったこの穏やかな風景」(本山周平)として成立していることだろう。そこには震災の予感などかけらもないのだが、逆にどんな日常的な眺めでも、失われた風景となってしまう可能性を秘めているということがありありと見えてくる。「写真にできること」、「写真だけにできること」という言葉が写真集の扉に掲げられているが、そのことをあらためて問い直す契機となる写真群ではないだろうか。

2016/10/15(土)(飯沢耕太郎)

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