artscapeレビュー
クリスチャン・ボルタンスキー アミタス─さざめく亡霊たち
2016年11月15日号
会期:2016/09/22~2016/12/25
東京都庭園美術館[東京都]
なるほど、この手があったか! と感心したのが本館の「作品」。展示室に入ると作品らしきものはなにもない。歩き回ると声が聞こえてくるが、これが「作品」か。意味を追おうとしても、詩のような言葉なのでつかみどころがない。これがホワイトキューブの展示空間だったらブチキレてるところだが、ここは装飾たっぷりのアールデコ空間なので飽きることがない。本館では同時に「アール・デコの花弁 旧朝香宮邸の室内空間」も開催しているが、これは特別になにか集めて公開するわけではなく、室内をそのまま作品として見せるだけ。つまりひとつの空間で視覚と聴覚ふたつの展覧会をやっちゃうという一石二鳥作戦なのだ。でもさすがにこれだけじゃあ「金返せ」と言われると思ったのか、新館では近作を展示。ギャラリー1は《まなざし》と題するインスタレーションで、中央にウンコのような金色の固まりを置き、周囲に顔の拡大写真をプリントした半透明の幕を幾重にも吊るしている。ギャラリー2は《アニミタス》という映像インスタレーションで、床に枯葉を敷き、中央のスクリーンに両側から乾いた風景と湿った風景を映し出している。これは南米と日本の対照的な風景だが、どちらにも風鈴を設置してあるのでシャラシャラと涼しげだ。まあ新館のほうがいかにも作品然としているが、刺激的という意味では本館のほうが好きだ。
2016/10/28(金)(村田真)