artscapeレビュー

地域のなかのアートな居場所 Aplus×ATLIA

2018年07月01日号

会期:2018/04/07~2018/05/20

川口市立アートギャラリー・アトリア[埼玉県]

川口市内の旧芝園中学校の校舎を共同スタジオとして借りているアーティストたちの作品展。今回は後期の展示で16人出品しているから、全体で30人規模の大所帯だ。ま、そのうち2、3人活躍する人が出てくればいいほうだろう。いまのところ期待が持てるのは、窓ガラスや鏡に風景をプリントする鈴木のぞみと、大理石模様を克明に描く石黒昭くらいか。

こうしたスタジオのシェアやアーティストの支援活動を行っているのが、「アプリュス(A+)」という、アーティストによるNPO。今日は「アートな出会いとその先へ」と題して、アプリュス代表の柳原絵夢とスタジオアーティスト、ゲストとしてBankART代表の池田修らが参加するトークが行われた。柳原氏によれば、こうした活動を始めたきっかけは、予備校で教わった講師がいまや伝説の「スタジオ食堂」にいたからだという(だれだ?)。なるほど、それでアーティストたちに単にスタジオで制作するだけでなく、オープンスタジオやワークショップを通して地元の人たちと交流したり、地域活動に参加することを求めているのか。それに対して池田氏は、アーティストにとって重要なのは作品づくりで、地域活動に引っぱられすぎないようにと助言。これはまったく同意見で、作品をつくるためにスタジオを借りたのに、いつのまにか社会活動家になっていたとしたら本末転倒というものだ。

その後、バスで芝園スタジオを見学。アトリアからはけっこう遠いが、最寄りの蕨駅からすぐなので足の便は悪くない。校舎だったので教室がスタジオとして使えるし、教室ごとに水道もあるので便利。絵画、彫刻、陶芸、木工など入居アーティストのやっていることは多彩だが、窯や工具を貸し借りできるのはこうした共同スタジオの最大の利点だ。横浜より都心に近いのに、家賃はずっと安い。これはいい。

2018/05/19(村田真)

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