artscapeレビュー
岡村桂三郎展―異境へ
2018年07月01日号
会期:2018/04/21~2018/06/24
平塚市美術館[神奈川県]
熱海から「岡村桂三郎展」の開かれている平塚へ。岡村の作品は毎春コバヤシ画廊で開かれる個展を何度か見たくらいで、こうしてまとめて見るのは初めて。会場に入ると、まず80-90年代の初期作品が並ぶ。最初の作品は東京藝大の大学院を修了した1985年の《肉を喰うライオンA》で、このころから動物をモチーフにしていたことがわかる。これが導入部で、次に魚や幻獣などを描いた高さ2メートル少々の板パネルが迷路状に並んでおり、そのあいだを通っていくと、高さ3メートルを超す屏風状の大作に囲まれる。これらがここ10年余りのうちに描かれた作品群であり、画廊サイズに合わせて制作されたシリーズをいったん解体し、再構成したものだ。だから1点1点を絵画としてみるより、全体でひとつのインスタレーションとして見るべきだろう。
照明が暗く、画面もほとんどモノクロームなので、そこに彫られた(ここでは「描く」と「彫る」がほぼ同じ)目や動物の輪郭は把握できるものの、それがなんであるかはよくわからない。わからないのも当然で、迦楼羅とか龍とか百鬼とか実在しない怪物が多い上、身体がはみ出して画面に全体が収まっていないからだ。いわゆる群盲象をなでる感覚。それで思い出したが、長沢蘆雪の《白象黒牛図屛風》にどこか似ている。ともあれこの入魂のインスタレーション、「動物画」とか「日本画」みたいな狭い枠で語られることがないよう祈るばかりだ。
2018/05/20(村田真)