artscapeレビュー
第12回 shiseido art egg 冨安由真展
2018年07月01日号
会期:2018/06/08~2018/07/01
資生堂ギャラリー[東京都]
これは大規模なインスタレーション。地下へ階段を下りて受付を過ぎると、目の前にドアが。なかに入ると薄暗い部屋になっていて、別のドアを開けるとまた部屋になっていて……ギャラリー内にいくつもの部屋と廊下をつくり込んでいるのだ。しかも部屋に掛かっている絵がガタガタ揺れたり、テレビが急についたり、照明が点滅したり、子供のころ怖がった現象が次々に起こる仕掛け。いわゆる悪夢というか、お化け屋敷というか。
でも残念ながら、2つの似たような先行例があるのでインパクトは弱い。ひとつは、同じ資生堂ギャラリーで4年前に開かれた「目」の個展「たよりない現実、この世の在りか」。同じようにギャラリー内にホテルの客室と廊下をしつらえて、迷宮のような仕掛けを施していた。その記憶が強烈なだけに、二番煎じに見えてしまうのはやむをえない。もうひとつは、今年の「岡本太郎現代芸術賞展」で見たやはりお化け屋敷みたいな作品。これも暗い部屋をつくって家具や照明に細工を施したもので、作者はだれだっけと調べてみたら、なんと冨安由真さんご本人でした。なるほど「岡本太郎現代芸術賞展」ではサイズに制約があったから、今回はそれをギャラリーいっぱいに拡大して、「くりかえしみるゆめ」の世界を再現してみせたのかもしれない。
2018/06/08(村田真)