artscapeレビュー
ラ コリーナ近江八幡
2018年07月01日号
ラ コリーナ近江八幡[滋賀県]
藤森照信の設計した屋根に草の生えた建物は図版で見たことあるけど、それがなんの建物なのかは知らなかった。今回は生徒が予約してくれたのでただついていくだけだが、着いてみて驚いた。まるでジブリの世界を現実化したような大人心をくすぐる世界。いやもちろん子供心もくすぐるだろうけど、どっちかというと大人のほうが喜びそうな異世界だ。
緑に覆われた三角屋根の建物に入ってさらに驚いた。なんだお菓子屋じゃねーかよ! やけに混み合ってるなと思ったら、バウムクーヘン売り場の前にできた長い行列が、もはや線ではなく面と化して幅を利かせているからだった。ここは和洋菓子の「たねやグループ」のショップ、本社、飲食店だけでなく田畑まで備えた一大ゾーンなのだ。そういえば午前中、生徒たちに連れられてお茶とケーキをいただいたクラブハリエ日牟禮ヴィレッジも、たねやグループだったのね。し、知らなかった……。
3時すぎ、ツアー担当のおねえさんが登場し、敷地内を案内してくれる。おねえさんは、お菓子をつくりたくて入社したのに、なんで田舎者を連れてツアーやんなきゃいけないのかしら? みたいな素振りはいっさい見せず、ニコニコと草屋根の裏に広がる田んぼ、銅屋根の本社最上階の展望室と藤森ミュージアムなどを案内してくれた。最後の藤森ミュージアムには、ラ コリーナのスケッチやマケットなどが展示されていて、ツアー客でないと入れないという。これは得した気分。田んぼに4つの巨岩が並んでいるのを見て「もの派」を思い出したが、藤森の発想は案外もの派に近いというか、もの派をメルヘンチックに味付けした世界観ではないか。世代的にももの派のほんの少し後だし。
2018/05/27(村田真)