artscapeレビュー

21世紀の美術 タグチ・アートコレクション展 アンディ・ウォーホルから奈良美智まで

2018年07月01日号

会期:2018/04/21~2018/06/17

平塚市美術館[神奈川県]

ついでに入った展覧会だが、おもしろい作品がいくつかあった。まず入口脇の壁に掛けられていた淺井裕介の泥絵。高さ7メートルはあろうかという大きな布に土で絵を描いた作品だが、ふだんどうやって保存しているのか、土は落ちないのか心配になる。ジョナサン・モンクの《アフター・スプラッシュ》は青いプールと家を描いたものだが、これはホックニーの有名な《ビガー・スプラッシュ》を知らないとわからない。ホックニーは水しぶきの上がるプールを描いたが、モンクは飛沫を消しているのだ。今津景の《サルダナパールの死》も似たような発想で、ドラクロワの同題の物語画の現代版で、人物や馬が去った後の散乱した室内を描いたもの。これは見事。

ヴィック・ムニーズの《デルフトの眺望(裏面)》は、フェルメールの《デルフト眺望》というタブローの裏側を見せた作品。もちろんニセモノだが、ムニーズはこのために綿密に調査して裏側を正確に再現したという。青山悟の《About Painting 2014-2015》は小さな刺繍で再現した名画を、縦軸の「ラディカル―コンサバティブ」、横軸の「パーソナル―ソーシャル」という座標に当てはめていった作品。ここに挙げた作品は淺井を除いて、すべて美術史を主題にしたり名画をいじったものばかり。ぼくの好みもあるが、外の世界に目を向けるより美術内に宝物が隠されているという認識は、ポストモダン時代ならではの見方だろう。

2018/05/20(村田真)

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