artscapeレビュー
GIRLS 毎日を絵にした少女たち
2018年07月01日号
会期:2018/04/28~2018/07/29
ボーダレス・アートミュージアムNO-MA[滋賀県]
BankARTスクールのツアー2日目は近江八幡の建築巡り。カフェとして使ってる日牟禮館やヴォーリス記念館、ヴォーリス学園など市内に点在するヴォーリス建築を見学の途中、立ち寄ったのが町家を改装したボーダレス・アートミュージアムNO-MA。滋賀県はアウトサイダーアートへの取り組みが盛んだが、ここも2004年の開館以来さまざまなアウトサイダーアートを紹介してきた場所。今回は高齢になってから絵を描き始め、長寿をまっとうした塔本シスコ、仲澄子、𡈽方ゑいの3人の女性の作品を紹介。3人とも1910年代(大正初期)の生まれで、それぞれ50代、70代、80代になってから絵を描き始め、いずれも100歳前後まで(つまり最近まで)生きてきたというから驚きだ。とんでもなくスロースターターだが、逆にいうとそれだけ記憶も経験も豊富で、描く材料にはこと欠かなかった。
この3人のなかでは塔本シスコが比較的知られているが、やはり絵もいちばんインパクトがある。まず色彩が強烈で、画面も左右対称花や人物などのモチーフはパターン化され、繰り返し描かれるというアウトサイダーアート特有の特徴が見られる。仲澄子と𡈽方ゑいはどちらも70-80年間ため込んだ記憶を描き留めた絵日記のようなもの。だれでも描けるといえば描けるし、ヘタであればあるほど味わい深く感じられもする。ここらへんが単なるヘタとの微妙な違いだ。ふと思うのは、彼女たちはほぼ同世代で、趣味(なのか?)も似ているので、お互いに交流を持っていたらどうだったろう。激動の時代を生きてきただけにみんな積もる話はたくさんあるだろうし、交換日記なんかしていたら新しい世界が広がっていたかもしれない。でもそれぞれの絵の独自性は薄まっていったかもね。
2018/05/27(村田真)