2019年09月15日号
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artscapeレビュー

白井晟一の「原爆堂」展──新たな対話にむけて

2018年07月15日号

会期:2018/06/05~2018/06/30

Gallery5610[東京都]

311の原発事故を経て、新しい意味を獲得したことから、「白井晟一の『原爆堂』展」が、表参道のGallery5610で開催された。丹下健三の《広島平和記念資料館》(1955)とほぼ同時期に、白井が構想した原爆に対する建築からのもうひとつのアンサーである。誰かに依頼されたわけではない、半世紀以上も前のアンビルドのプロジェクトだが、もともと時流を意識せず、時代を超越したデザインのため、いま見ても古びれていない。目玉のひとつは、岡崎乾二郎の監修によって武蔵野美術大学の展示の際に制作された模型が出品されていること。これはすぐに壊れそうないわゆる建築系の白模型ではなく、重厚感をもち、モノ自体がアート的な迫力を獲得していた。また今回のために新規に制作された竹中工務店によるCGのムービーは、入口から地下にもぐり、螺旋階段を昇って、展示室に至るシークエンスを表現している。特にテクスチャーにこだわった仕上がりで、白井の実作を参考にしたせいかもしれないが、《松濤美術館》を想起させる。会場では、ほかにスケッチ、図面、年表、筆者を含む石内都や宮本佳明らへのインタビュー映像などが展示された。じっくりと図面を見ると、地下に2箇所、男女共用のトイレも設計されており、左側はおそらく事務方、右側は来館者用のようで、リアルに設計されていたことがうかがえる。

6月24日のトークイベントでは、白井の原爆堂が獲得した普遍的な意味について、原発/原爆問題に取り組む医師の稲葉俊郎と対談を行なう。稲葉さんからは科学史を振り返り、死と医療、墓とシンボルなどについて語り、筆者からはコミュニティ以外にもあるはずの建築の力に触れた。それにしても「原爆堂」というのは、すごい名前である。大阪万博でさえ、展示で原爆を入れようとしたら、アメリカへの忖度から政府が変更させたというから、公共施設としては、絶対に成立しなかったネーミングだろう。



2018/06/13(水)(五十嵐太郎)

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