artscapeレビュー

《丘の上の寺子屋ハウス CASACO》《WAEN dining & hairsalon》《ヨコハマアパートメント》

2018年07月15日号

[神奈川県]

五十嵐研のゼミ旅行の2日目は、横浜・日ノ出町にて、tomito architecture(冨永美保+伊藤孝仁)が設計した《丘の上の寺子屋ハウス CASACO》に集合し、世界の朝ご飯を食べるイベントに参加した。構造補強として鉄骨のフレームを挿入しながら、木造の二軒長屋の壁や2階の床を抜き、前面の道路から奥まで視線が抜ける開放的な空間を実現している。吹抜けにおいてシンボリックに存在する階段は、二軒長屋の間の壁がなくなったことで、ダブルで並ぶが、現在、片方は本棚として使われていた。日曜の朝だったが、本当に近隣の子供が集まる場になっていた。なお、2階は留学生が暮らす場であり、全体としては地域に開かれたシェアハウスである。またtomito architectureの事務所もすぐ近くに構え、この建物がどのように使われるか、というソフトの面で積極的に関わっている。

続いて、伊藤孝仁さんに日の出町を案内してもらい、やはりtomito architecture が手がけた《WAEN dining & hairsalon》を見学する。古い一軒屋をリノベーションし、1階をヘアサロン(奥)+カフェ(手前)に改造したものだが、長い時間をかけないと成立しない庭の緑環境が、建築を引き立てる。ここから駅に向かって降りる坂道の途中にも、リノベーションで面白くなりそうなさまざまな物件があった。若手の建築事務所が関わっていくことで、この町の将来がどのように変化していくかが興味深い。

日ノ出町から移動し、オン・デザインによる《ヨコハマアパートメント》を見学した。3度目の訪問だが、もう完成して10年近くが経過している。下の共有空間を囲む大きなビニールはさすがに少しくたびれていた。現時点から振り返ると、これはシェア感覚の空間を建築的な手法で解いた、いち早い事例である。また、いまは独立した中川エリカが事務所に入ってすぐに担当した物件らしい。そしてオン・デザインが担当スタッフと連名で作品を発表するようになったのも、この頃である。

《丘の上の寺子屋ハウス CASACO》


《丘の上の寺子屋ハウス CASACO》吹き抜けと鉄のフレームによる補強。2階は居住部分



《丘の上の寺子屋ハウス CASACO》左は細長い土間。手前に本棚になった階段が見える

《WAEN dining & hairsalon》


《ヨコハマアパートメント》


2018/06/10(日)(五十嵐太郎)

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