artscapeレビュー
「建築倉庫ミュージアムが選ぶ30代建築家」「ル・コルビュジエ / チャンディガール展」
2018年07月15日号
建築倉庫ミュージアム[東京都]
今春、リニューアルした建築倉庫を訪れた。以前とは入口が変わり、脇からではなく、正面から入場するかたちとなり、企画展示の空間もとても良くなっている(入場料はさらに高くなったのだが、せめて学生割引くらいは導入したらよいのではないか)。展示室Bの「建築倉庫ミュージアムが選ぶ30代建築家─世代と社会が生み出す建築的地層─」展は、昨年のU-35組のメンバーをベースに5組の若手を選出している(齋藤隆太郎、岩元真明+千種成顕、酒井亮憲、三井嶺は、大阪や仙台の巡回展でも展示していたが、今回は藤井亮介が増えた)。齋藤の挨拶文によれば、社会や環境に対する建築的な解答を通して、「新しいチャレンジ」を模索している状況を提示し、上の世代との対話や議論を生みだすことを狙ったという。会場が大きくなったこともあり、新規の模型も増えていた。なお、会場の両側の棚には、企画展の内容とは別に、過去の名作、建築倉庫がセレクトした作品、コンペの模型なども展示していた。
もうひとつ建築倉庫で開催中だったのが、展示室Aの「ル・コルビュジエ / チャンディガール展─創造とコンテクスト─」である。東京大学の千葉学研究室が全面協力し、ル・コルビュジエ研究者の加藤道夫も監修に入る、本格的な企画だった。会場では、まずアプローチにル・コルビュジエがインドで手がけた建築の模型を一直線に並べ(アーメダバードの繊維業会館など)、つきあたりの壁からチャンディガールの紹介が始まる。そしてスケッチやドローイングのほか、大成建設が所蔵する絵画、ホンマタカシが撮影した写真、大型の模型などを展示し、複数のメディアを通じて、都市計画と建築群を紹介する。注目すべきは、床に大きくチャンディガールの平面をプリントし、その上に州議事堂や高等裁判所など、主要な施設の模型を置いたことだ。都市という広がりを想像させる有効な展示手段だろう。
2018/06/24(日)(五十嵐太郎)