artscapeレビュー

MOTOKO「田園ドリーム」

2018年07月15日号

会期:2018/06/01~2018/06/06

オリンパスギャラリー東京[東京都]

MOTOKOは2006年に写真の仕事で滋賀県高島市針江地区を訪れ、農業に関わる環境の「目には見えない多様な世界」に強い興味を覚えるようになる。2008年からは、滋賀県長浜市と高島市で、都会からUターンして米農家を継いだ若者たちを撮影し始めた。こうして「田園ドリーム」と名づけた写真シリーズが形を取っていった。

さらに東日本大震災以降、「田園ドリーム」の撮影・発表が呼び水となって、「カメラを使って地域の人が地域の魅力を発信する」という「ローカルフォト」の運動が、香川県小豆島、滋賀県長浜市、長崎県東彼杵町、静岡県下田町、山形県山形市などで相次いで生まれてくる。東京写真月間のテーマ展示「農業文化を支える人々──土と共に」の一環として開催された本展では、MOTOKOの「田園ドリーム」の作品とともに「小豆島カメラ」、「長浜ローカルフォトカメラ」のメンバーたちが撮影した写真、「真鶴半島イトナミ美術館」の活動を紹介する映像などが展示されていた。

展示を見て強く感じたのは、デジタルカメラとSNSの進化によって、写真を撮影・発表するシステムが大きく変わってきたということだ。MOTOKOがあえて「集合写真を撮る」ことにこだわり続け、カメラと正対するストレートな撮り方を基本としていることもあるが、プロとアマチュアの写真の質的な差異はほとんど解消されている。「誰でも簡単に質の高いデザインや写真が発信できる」いま、むしろ「ローカルフォト」の参加者の自発的なエネルギーを引き出しつつ、どのようにアウトプットの場を育てていくのかが重要になる。その意味では、彼らの活動自体が、カメラメーカーの運営するギャラリーの空間にはおさまりきれなくなってきそうだ。それぞれの「写真チーム」が、自分たちのやり方で発表の媒体をつくり上げるとともに、各プロジェクトの横のつながりも必要になってくるのではないだろうか。

2018/06/06(水)(飯沢耕太郎)

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