artscapeレビュー

下瀬信雄「蛇目舞(jamais vu)」

2018年07月15日号

会期:2018/05/30~2018/06/05

銀座ニコンサロン[東京都]

「蛇目舞」と書いて「jamais vu(ジャメヴュ)」と読ませる。「jamais vu」(未視感)は、「déjà vu」(既視感)の逆で、見慣れたものであるにもかかわらず、初めて見るように思えるという感覚である。下瀬信雄は「身の回りの自然、小動物」を撮影する行為を続けるなかで、「jamais vu」に気づき、それを写真シリーズに定着しようと考えた。今回の銀座ニコンサロンの個展では、その第一弾として55点のプリントが提示されていた。

下瀬は1944年生まれ、山口県萩市在住のベテラン写真家で、1977年の「萩」(銀座ニコンサロン)以来、これまで受賞記念展やアンコール展を含めると銀座、新宿、大阪のニコンサロンで30回もの個展を開催している。これは歴代最多であり、さらに更新されていく可能性が高い。にもかかわらず、いつも新たなジャンルにチャレンジしようとしている。今回の「蛇目舞」シリーズも、デジタルカメラだけでなく4×5インチ判や8×10判の大判カメラも使用し、ギャラリーの壁ごとにプリントの大きさを変えて展示するなど、若々しい意欲にあふれていた。デジタルプリントの色味の調整も、だいぶ思った通りにできるようになってきたようだ。

今回は、月の光で撮影された、不思議な生き物のような「キカラスウリ」の写真(DMにも使われている)など、植物のイメージが中心だったが、それだけでは終わるつもりはないようだ。「蛇目舞」シリーズは、今後はもっと幅の広い被写体で撮り続ける予定だという。次回の展示も楽しみである。なお、本展は2018年6月28日~7月4日に大阪ニコンサロンに巡回する。

2018/06/01(金)(飯沢耕太郎)

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