2019年12月01日号
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artscapeレビュー

ロレーヌ国立バレエ団『トリプルビル』

2018年10月15日号

会期:2018/09/21~2018/09/22

ロームシアター京都[京都府]

ロレーヌ国立バレエ団による『トリプルビル』をロームシアター京都で鑑賞した。横浜におけるKAATの公演は満員だったらしいが、席に空きが目立ったのに驚かされた。もっとも、コンテンポラリーダンスというよりも、バレエ好きの親子が結構いたのは興味深い。音楽はフィリップ・グラス、バッハ、デイヴィッド・チューダー。振付は実験的な新作のほか、フォーサイスの脱構築やポストモダンのカニングハムによるものという歴史的な演目を含む、3作品が並ぶというのに、あまりにもったいない。今年のサマーソニックのトリをつとめたBECKが、がらがらだったことも信じがたい風景だったが。ちなみに、フォーサイスの『STEPTEXT』は、同じ京都のホールで27年ぶりに上演される機会だった。

特に印象に残ったのは、冒頭のベンゴレア&シェニョー振付による新作『DEVOTED』である。ミニマル音楽を背景に、バレエのポワント(爪先立ち)を徹底的に反復することによって、そのジャンルを代表する身体の技術を異化させる。音楽とダンスがいずれも繰り返しを継続し、異様な迫力を帯びるのだが、(おそらく凡ミスもあったが)たぶん意図的に未完成のものを混入させることで、さらに緊張感を強めていた。あまりに全員がポワントを完璧に行なうよりも、ポーズが崩れるかもしれないぎりぎりの状態を一部組み込むことで、まさに目が離せなくなる。そうしたなかで日本人の大石紗基子が、キレキレの高速回転と安定感のある静止を見せることで、びしっと全体を引き締めていた。『STEPTEXT』は、断片的にバッハの音楽を切り刻みながら挿入するために、無音の状態が長く続き、これも緊張感をもたらす。音楽と運動が完全に一致しながら、ずっと流れるのは当たり前のダンスだが、両者をズラしたところにいまなお新鮮な感動を与えてくれる。

2018/09/22(土)(五十嵐太郎)

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