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artscapeレビュー

ぽむ企画・たかぎみ江さんの訃報

2018年10月15日号

Twitterのタイムラインを眺めていたら、ぽむ企画のたかぎみ江さんの訃報が飛び込んだ。今年は筆者よりも下の世代の建築史の研究者、大阪歴史博物館の学芸員だった酒井一光が癌で亡くなったが、彼女もあまりに若すぎる。ぽむ企画とは雑誌の取材を通じて、ライターの平塚桂さんのほうから取材される機会はしばしばあったが、イラストも描くたかぎさんとはそれほど多く会うことはなかった。が、サブカルチャーにひっかけながら、これまでにない語彙で建築を考えたり、説明するテキストと、どこかとぼけたようなイラストの絶妙な組み合わせが、大きな魅力だった。ポストモダンの時代は、むやみに建築が小難しく語られていたから、余計その違いが際立っていた。ぽむ企画は、新しい建築の語り口でネットの世界から登場し、雑誌『カーサ ブルータス』や書籍など、紙の媒体に展開したライター+イラストの最初の世代である。それまでは短文でも雑誌に寄稿することから、だんだんステップアップするのが当たり前の時代だったからだ(もっとも、現在はこの構図も崩れようとしている)。しかも、女性二人のユニットも、過去の建築ライターに例がない。

いまから振り返ると、ブログが使われていたネットの創成期、ぽむ企画がプロになる前の、京都大学の学生だったときから注目し、彼女たちが人に知られるきっかけをつくった筆者として(ぽむ企画はそれを「五十嵐隊長によるビッグバン」と呼んでいた)、たかぎさんが亡くなったことを本当に残念に思う。じつは当時、今後はぽむ企画に続く書き手がいっぱい登場すると考えていた。ところが、意外にその後、彼女たちのような建築系のライターは増えていない。確かに、Twitterでいろいろな悪口を書いて、自分をマウンティングして満足するような匿名の輩は数多い。しかし、結局はユーモアをもちながら、建築をポジティブに伝えられる才能がない。ぽむ企画はそれを成し遂げた稀有な存在である。

2018/09/25(火)(五十嵐太郎)

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