artscapeレビュー

元田敬三「御意見無用」

2018年10月15日号

会期:2018/09/15~2018/10/08

MEM[東京都]

森山大道展が『東京ブギウギ』を展示していたNADiff a/p/a/r/tの階上にあるギャラリー、MEMでは、元田敬三の「御意見無用」展が開催されていた。ビジュアルアーツ専門学校大阪出身の元田は、森山に直接に教えを受けたわけではない。だが路上スナップ写真への徹底したこだわりを見ると、まさにその正統的な後継者のひとりといえる。それでも、彼の新作を今回あらためて見直して、その撮影のスタイルにかなりの違いがあることがわかった。

何をどのように撮るのかを定めず、白紙の状態で街を彷徨い歩き、目の前に出現した被写体に反応してシャッターを切る森山に対して、元田はある程度被写体の幅を限定しているように見える。今回のシリーズでいえば、「群衆の中であきらかに特異なオーラを放ち、独自の人生観を持っている人たち」に特化してシャッターを切っているのだ。またストロボを多用し、21ミリの広角レンズを使っているために、彼が撮影した人物たちは周囲の光景から浮き上がり、奇妙に歪んだ姿で写真に写りこんでいる。結果として、元田の写真群には、あたかも狙った獲物に飛びかかるような緊迫した雰囲気が漂うことになった。

人によっては、あまりにも強引すぎる撮影法に見えるかもしれないが、1990年代から自分のスタイルを貫き通してきたことによって、彼の写真に独特の凄みと風格が備わりつつあることは間違いない。そろそろ『青い水』(ワイズ出版、2001)以来の制作活動の積み上げを、1冊の写真集にまとめる時期がきているのではないだろうか。

2018/09/26(水)(飯沢耕太郎)

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