2020年07月01日号
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artscapeレビュー

目[mé]「非常にはっきりとわからない」

2019年12月15日号

会期:2019/11/02~2019/12/28

千葉市美術館[千葉県]

いつもはビルの8階に受付があるのだが、今回は1階のさや堂ホールに受付をしつらえ、7、8階の展示室に上がる仕組み。さや堂ホールは工事中みたいに半透明のシートで覆われ、中央に置かれた教壇のような台の上には布に包まれた彫像らしきものが2体置かれ、手前に椅子を並べている。んー、なんか怪しげだ。

まず8階に上がってみた。展示室にはところどころ目の作品や美術館のコレクションが飾られているが、一部にはシートが掛けられ、脚立や仮設壁が無造作に置かれ、あろうことかスタッフが道具を持って行ったり来たり、仮動壁をあっちこっち動かしたりしているではないか。展示し終わった作品を見せるのではなく、作品の搬入(搬出)プロセスを見せる「ワーク・イン・プログレス」のインスタレーションだろうか。などと思いながら7階に下りてみると……、あれ? と思ってもういちど8階に上がって確認し、また下りて、を何度か繰り返すことになる。ぼくだけじゃなく、みんなそうして自分の「目」を疑っていた。

まだ会期もあるのでネタバレしないように詳しくは書かないが、これは7、8階の展示室の特殊な構造に着目したインスタレーションであり、もし展示室の構造が違っていたらこの発想は生まれなかった展覧会だ。だとするなら、この展覧会は目のほうから美術館にアプローチしたのだろうか、それとも美術館が目にオファーしてから展示室に着目したのだろうか。いずれにせよここまでやりきるのは見事というほかない。しかもインスタレーションだけなら単なるトリックアートになりかねないところを、スタッフがあれこれ動かすパフォーマンスを加えることで時間軸を掻き乱し、複雑性を増している。

そもそも美術の根源は「物真似」にある、とぼくは思っている。目の前にあるものでもないものでも、ホンモノそっくりに描き出すこと。これが絵画の出発点だ。不思議なことに人間は、そうした物真似=ニセモノを喜び、ときにホンモノ以上に重宝したりする。こうしたホンモノとニセモノとのせめぎ合いを、目は楽しみながら作品化し、また見る者を驚かせようとする。美術の出発点が物真似遊びにあるとするなら、目はまさに美術の原点に戻って遊んでいるのだ。あれ? ネタバレしちゃった? 帰りに美術館の隣の更地を見ると、鉄パイプの足場が組まれ、仮囲いには「千葉市立美術館拡張整備工事」の看板が貼られていた。ひょっとして、これも目の仕業? 館名もわざと間違えた?

2019/11/30(土)(村田真)

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