2020年01月15日号
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artscapeレビュー

マル秘展 めったに見られないデザイナー達の原画

2019年12月15日号

会期:2019/11/22~2020/03/08

21_21 DESIGN SIGHTギャラリー1&2[東京都]

なかなか面白い展覧会だった。日本デザインコミッティーに所属する26人のデザイナーや建築家、木工作家、デザイン評論家らメンバーが、スケッチや図面、模型などの「原画」を公開する企画なのである。「原画」と呼んでいるが、なかにはメモや走り書き程度のものまである。もし私が彼らの立場だったら、きっと恥ずかしくて公開できないだろう。手書きの原稿はないが、取材ノートなんてものは人様に見せられたものではない。しかしそれをやってくれているのである、第一線で活躍するデザイナーらが!

展示風景 21_21 DESIGN SIGHTギャラリー2[撮影:吉村昌也]

例えば建築家の内藤廣は非常に興味深いメモを展示していた。赤ペンで鬼の顔が描かれ、その顔の真ん中に点線が縦に引かれていて、右側と左側にそれぞれ8項目くらいの言葉が並んでいる。右側に「夢想型」と書かれていたら、対する左側には「現実型」と書かれているなど、対義語の応酬である。また円形三つを重ねた図やフローチャートなど、いわゆるマインドマップが多い。これらの展示を眺めていると、まるで内藤の思考のなかを旅しているような気分になる。一方、グラフィックデザイナーの佐藤卓は自身の過去の手帳を展示していた。ほぼ毎日1時間〜30分単位のスケジュールを非常に細かい字で丁寧に書き込んでいて驚いた。佐藤の几帳面さが伝わる。またいくつかのロゴが生まれるまでの手書きの試作もあり、完成版を知っているだけに、まるでデザインが生まれる瞬間に立ち会ったような気分にもなる。グラフィックデザイナーの原研哉は本当に原画?と思うような端正なスケッチを何枚も発表していて、原の完璧主義な性格をうかがえた。建築家の隈研吾のコーナーには建築模型もたくさんあったが、何より目を見張ったのはいろいろな紙に書かれた手書きの文章である。著書の原稿なのか、もしくは自分の思考を整理するための文章なのか……。

内藤廣 メモ

隈研吾 展示風景[撮影:吉村昌也]

このように人によって「原画」のあり方がさまざまで大変興味深かった。そこには性格もにじみ出る。やはり第一線で活躍するほどのデザイナーらは、つねに手を動かし、何かに書き留めて思考しているのだ。この姿勢を私も見習うべきだと痛感した。もうひとつ良いと思ったのは、展覧会特設サイトでメンバーのインタビュー音声を聞ける点だ。聞き手は展覧会ディレクターを務めたデザインエンジニアの田川欣哉と日本デザインコミッティーのメンバーのひとりであるアーティストの鈴木康広。26人のなかでもっとも若手の二人が心和むインタビューを繰り広げる。「原画」で手の内を見せられ、インタビューで生の声を聞くと、第一線で活躍するデザイナーらであっても、急に身近な人に感じられるから不思議だ。彼らも生身の人間なのである。


公式サイト:
http://www.2121designsight.jp/program/inspiration/
http://designcommittee.jp/maruhi/

2019/11/30(土)(杉江あこ)

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