2020年07月01日号
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artscapeレビュー

村田沙耶香×松井周 inseparable『変半身(かわりみ)』

2020年01月15日号

会期:2019/11/29~2019/12/11

東京芸術劇場[東京都]

松井周と村田沙耶香が取材旅行を通じて、共作というかたちでつむがれた架空の島の物語が、同じタイトルを共有しながら、演劇と小説という2種類の形式で作品化された。2人は、外界と地理的に閉ざされた場所であるがゆえに成立する小さな社会のコスモロジーを創造するわけだが、もちろんそれは現在の日本の状況とも呼応している。

さて、演劇の方は、島の祭りで亡くなったはずの弟が突然蘇ることによって、海と山のコミュニティに波紋を起こす。そして国生みの神話を背景に、島で発掘されるレアゲノムによって異種交配する人類の進化と終焉といった、壮大な物語に展開していく。筆者もそうだったが、予備知識なしに鑑賞したら頭がくらくらするような終盤の展開は、ほとんど予想がつかないだろう。しかしながら、スケール感のでかい内容に対し、舞台美術は海が見える風景ではなく、基本的には室内である。すなわち、日が射して、大きなガラス窓のあるコンクリートの建物という小さな空間だ。だが、その外部の社会構造と変容を想像させながら、住民の会話は進行し、存在してはいけないはずの弟が出現すると、世界のタガが外れていく。祝祭と狂気、笑いと不道徳、そして悲哀。演劇という方法でしか享受できない体験を通じて、アンチ・ヒューマニズムの未来を目撃させる作品だ。

かたや小説版の『変半身』は、設定は同じだが、作品内に登場する奇祭を別の角度から解釈している。すなわち、若い登場人物が島を脱出し、生活の拠点を変え、大人になることによって、身も蓋もない外部からの視点も導入されるのだ。こちらはある意味メタ視点であり、都合がいい歴史修正主義に対する批評性をもつ。小説版は、演劇とはだいぶ違った切り口のまま終わるような印象を読み手に与えるが、ラストのぶっ飛び方は演劇とも共振している。

特に小説だけに、祭りによって「ニンゲン」が終わると、言語そのものが書き換えられていく。そして見開きのページが、「ポーポー」というオノマトペの群れで埋めつくされる。途中の経緯こそ異なれど、結論は同じなのだ。なるほど、演劇と小説の2作品は、セットで楽しむことができる。いや、プロジェクト名に掲げられていたように、両者は「inseparable」=切っても切れない関係なのだ。

公式サイト:
http://samplenet.info/inseparable/ [演劇版]
https://www.chikumashobo.co.jp/special/kawarimi/ [書籍版]


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