2020年03月15日号
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artscapeレビュー

西岸美術館(ウェストバンド・ミュージアム)とその一帯

2020年01月15日号

西岸美術館(ウェストバンド・ミュージアム)[中国、上海]

上海の黄浦江の西岸(ウェストバンド)は、かつて工業地帯だったが、現在は美術館やギャラリーが続々と増えている。2019年末にオープンした西岸美術館(ウェストバンド・ミュージアム)は、5年間という期間限定だが、ポンピドゥー・センターと提携していることで注目された。香港にアート・バーゼル、上海にポンピドゥーとなると、日本とは違い、中国の現代美術シーンが活性化していることを思い知らされる。すでにこの建物の周辺には、コンテナを積んだシャンアートや青山周平が手がけたオオタファインアーツなどの現代美術のギャラリー群が集結し(工場だったM50のアート地区から移転したものもあるという)、写真センター、石油タンクや倉庫を改造した展示施設が並ぶ。近くには超高層のオフィスやタワーマンションも林立し、高級なエリアとなっている。


「ポンピドゥー・センター展」の展示風景



コンテナを積んだシャンアートの外観

飛行機の格納庫を転用した巨大なアートセンターA館では、ファーウェイのプロモーション企画「手机影像艺术」展が開催され、写真、映像、音響の性能を体験してもらうアート的な展示が行なわれていた。ただし、こちらはインスタや自撮り目的の若者が多い。


アートセンターA館の内部

さて、ウェストバンド・ミュージアムは、デイヴィッド・チッパーフィールドの設計によるもの。コンテクストがあまりない敷地のため、デザインの根拠をつくる難しさを感じたが、2階は異なる方角を向く3つの直方体ヴォリュームの展示室をのせて、端部は風景を見ることができる大きな開口をもつ。西欧近代から現代美術までの名品コレクションを紹介するオープニング展「時のかたち(THE SHAPE OF TIME)」は、これらの箱を用いていた。


西岸美術館(ウェストバンド・ミュージアム)の外観


ウェストバンド・ミュージアムの内部

きわめて高い天井は、ラフな仕上げになっており、仮設壁も最上部までは到達させないので、新築でありながら、リノベーション風にも見える。ただし、この粗さが狙ったものなのか、施工の未熟さゆえなのかは微妙である。天井はすべて開閉可能で、自然採光も取りこめる(ただし、オープニング展では閉じられていた)。やはりチッパーフィールドが手がけたソウルのアモーレ・パシフィック美術館のビルと似た中央の吹き抜けにあるショップは、ミーハーなグッズが一切なし、ハイブロウな美術書のみだった。1990年代の初頭、筆者が初めて上海を訪れたとき、ここで洗練された空間を見る日が来るとは思わなかった。


ウェストバンド・ミュージアムの天井


ウェストバンド・ミュージアムの柱のフォルム


ウェストバンドに立ち並ぶ、展示施設群

2020/01/01(水)(五十嵐太郎)

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