artscapeレビュー
ZIG HOUSE/ZAG HOUSE
2020年01月15日号
会期:2019/12/07~2019/12/14
ZIG HOUSE[東京都]
古谷誠章の自邸で開催されたスタジオ・ナスカの展覧会「NASCA since 1994」に足を運んだ。目的は当然、普段は公開されていない住宅を見学することである。三軒茶屋駅から10分強の住宅街において、木々に囲まれた一角が敷地だった。早稲田大学の研究室のメンバーが年度末に集まってバーベキューを行なうと聞いていたが、なるほど、この庭と建築ならば、大人数でも対応できるだろう。
もともと古谷が育った生家の敷地に、いずれもL字型プランの両親の家と自邸を向かいあわせに建てたのが、《ZIG HOUSE/ZAG HOUSE》(2001)である。敷地で育った木々をそのまま残すように、それらの木々を避けて建てたことでジグザグの形状になったものだ。2つの家はエントランス、リビング、ダイニング、キッチンが導入部にあり、外部を挟んで並んでいることから、一体として使うことも可能になっており、自邸は奥に主寝室、2階に子供部屋を配していた。そして不整形な敷地の余白にリノベートしたかのような下屋が設けられ、水まわりや納屋が収められている。
正面から見て右側が自邸の《ZAG HOUSE》、左側が両親の暮らした《ZIG HOUSE》であり、後者の1階と2階にパネルや模型を用いて、スタジオ・ナスカのプロジェクトが展示され、筆者が滞在した日は朝早くから多くの建築関係者が訪れていた。実際、こうした開かれた使い方が似合う住宅だった。集成材を反復する門型フレームは、住宅のスケールを超え、小さな公共建築のようであり、ナスカの建築空間に通じる。特に4本の柱が立つ中間の屋外空間、またフレキシブルに伸び縮みしながら、使い方を調整できる建築の考え方がそうだ。例えば、《茅野市民会館》が想起されるだろう。そうした意味で、《ZIG HOUSE/ZAG HOUSE》は住宅でありながら、スタジオ・ナスカの作品を考えるうえで重要な建築にもなっている。また筆者は「東北住宅大賞」で10年間、古谷といっしょに審査を担当した経験をもつが、彼の好みも思い出しつつ見学した。やはり、外構も魅力的である。
*公式サイト:http://www.studio-nasca.com/
2019/12/14(土)(五十嵐太郎)