2021年10月15日号
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artscapeレビュー

開館記念展 見えてくる光景 コレクションの現在地

2020年03月01日号

会期:2020/01/18~2020/03/31

アーティゾン美術館[東京都]

休館していたブリヂストン美術館が「アーティゾン美術館」に名前を変え、展示スペースも一新して再出発した。「アーティゾン」とは「アート」と「ホライゾン(地平)」をつなげた造語だが、こういう「アート+なんとか」って発想はオヤジっぽくてダサいなあ。あ、BankARTも似たようなもんか。でも、あえてブリヂストンという母体の企業名を排して「アート」を強調したのは、ブリヂストンの企業戦略かもしれない。

旧美術館は戦後まもない時期、本社ビルの建設中に石橋正二郎がニューヨークを視察したとき、MoMAに感銘を受けて急遽ビル内に美術館を入れたというエピソードを読んだことがある。そのため外観からは美術館があることがわからず、天井高も展示空間としては低いのが難点だった。つまりブリヂストン社内の美術館だったのだ。それが、ビルの建て替えで中央通に大きく新美術館のエントランスを構えて新社屋の「顔」とし、その背後に本社機能を据え、ビルの名も「ミュージアムタワー京橋」と称することで、企業よりも美術館を前面に押し出したってわけ。最近流行の「ビジネスに役立つアート」を実践したかたちだ。

美術館は23階建てビルの低層階に位置し、面積は約2倍に増床。1階の広々とした吹き抜けのエントランスを入り、3階で受付を済ませて6階から4階まで3フロアにおよぶ展示室を見ていく。4階の一部は吹き抜けになっていて、5階から見下ろすことができる。2階にはミュージアムショップ、1階にはカフェも完備。これなら気軽に立ち寄りたいところだが、残念ながらチケットは日時指定の予約制なので、気が向いたときに立ち寄れるわけではない。

開館記念展は「見えてくる光景 コレクションの現在地」で、2800点ものコレクションから選りすぐった約200点を、「アートをひろげる」「アートをさぐる」の2部に分けて公開。第1部は、セザンヌ《サント・ヴィクトワール山とシャトー・ノワール》、ルノワール《すわるジョルジェット・シャルパンティエ嬢》といったおなじみの印象派絵画に始まり、フォーヴィスム、キュビスム、アンフォルメル、抽象表現主義、具体、草間彌生あたりまでほぼ時代順に並べている。印象的だったのは、ピカソの《腕を組んですわるサルタンバンク》とマティスの《縞ジャケット》のあいだに、関根正二の《子供》が置かれていたこと。いずれも100年ほど前に描かれた人物像で、ピカソとマティスはさらりと描いているのに、関根は色彩こそ明るいけどなにかどんよりと重苦しい空気が覆っている。ピカソとマティスはともに40代の脂ののった時期だが、関根はその半分にも満たない年齢だったことを思うと感慨深い。

第2部は、さらに「装飾」「古典」「原始」「異界」「聖俗」「記録」「幸福」に分け、シュメールやエジプトの彫刻から、明の景徳鎮、江戸期の洛中洛外図屏風、レンブラント、モロー、ゴーガン、青木繁、岸田劉生、そしてアボリジニのエミリー・カーメ・イングワリィまで幅広く紹介している。余計なお世話だけど、国公立の総合美術館じゃないんだから、時代やジャンルをもう少し絞ってコレクションしたほうが色をはっきり打ち出せるんじゃない?

2020/01/30(木)(村田真)

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