2021年08月01日号
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artscapeレビュー

太陽の塔

2020年03月01日号

太陽の塔[大阪府]

大阪日帰りの旅。あべのハルカスの「カラヴァッジョ展」が目的だが、ついでに(というには反対方向にある)太陽の塔を見に行ったら、予約なしでも内部を見られるというので入ってみた。万博が開かれた当時、関西に住んでいたので3回も足を運んだけど、ものすごく混んでて塔のなかには入れなかったからな。これはラッキー!

いまでこそ太陽の塔は広大な万博記念公園にポツンとぼっちしているが、当時はお祭り広場を覆う丹下健三設計の大屋根をぶち抜くようにオッ建っていた。それだけでなく、広場の地下展示場からエスカレーターで塔内を昇り、大屋根に抜ける「テーマ館」の展示施設および通路の役割も担っていたのだ。内部には高さ41メートルの「生命の樹」がそびえ、アメーバから人類まで進化の過程をエスカレーターに乗りながら見る仕掛けだったという。万博終了後はほかのパビリオンと同じくこの塔も撤去される予定だったが、なぜか塔だけが残され、以後半世紀近く放置されていた。

それが公開に向けて動き出すのは比較的最近のこと。2016年から塔の耐震補強工事と展示物の再生工事が行なわれ、2018年から予約制の一般公開が始まった。塔の裏から入り、「地底の太陽」(オリジナルは行方不明のため復元された)を拝んで塔の内部へ入場。エスカレーターは取り払われているので、階段を上りながら生命の樹に貼り付いている生物を進化順に見ていく。なんとなく半世紀前の時代を感じさせるのは、全体の色彩や照明がサイケ調で、アメーバや太陽虫や原始的な魚類の姿がウルトラマンに出てきそうな怪獣っぽくて、ティラノザウルスに似たトラコドン(カモノハシ恐竜)がゴジラみたいに立ち姿だからだ。あの時代、円谷プロの影響が相当なものだったことがうかがえる。

生命の樹のてっぺんはチンパンジーからネアンデルタール人を経て、腰蓑姿のクロマニヨン人(これも時代を感じさせる)で終わっていて、現代人は展示されていない。たぶんこれを見に来た観客本人が「現代人」ということだろう。大屋根に続いていた腕(羽根? ひれ?)の部分のエスカレーターも取り除かれ、鉄骨構造がむき出しになっている。帰りは裏口から狭い階段を下りるだけで素っ気ない。いやーそれにしても「カラヴァッジョ展」よりおもしろかったなあ。比べるもんでもないけど。



[筆者撮影]


2020/01/31(金)(村田真)

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