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大船渡、陸前高田、気仙沼をまわる

2020年09月15日号

[岩手県、宮城県]

BRTの大船渡駅に隣接する《おおふなぽーと(大船渡市防災観光交流センター)》(2018)は、2階に震災関係の写真展示はあったが、わずかなものだった。また外部の大階段から屋上の広場に登ると、そこが街の復興の様子を眺めることができる展望デッキにもなっている。これは非常時において、津波避難にも使えるわけだが、こうした空間の形式は、被災地における復興建築のプロトタイプになりえるだろう。


《おおふなぽーと(大船渡市防災観光交流センター)》の屋上広場に続く階段からの眺望

陸前高田に入ると、前回は建設現場を見学したSALHAUSの《陸前高田市立高田東中学校》(2016)が完成した姿を確認してから、盛り土された被災エリアに向かった。巨大な駐車場に面して、いずれも新しいショッピング・センター、図書館、ホール、飲食店などが並び、もはや過去の風景を想起させる要素は何もない。完全に別世界だった。隈研吾の《陸前高田アムウェイハウス まちの縁側》(2020)は木造であり、やはり外周部のスロープを登ると、屋根の上から展望できる。また伊東豊雄による宇都宮のパヴィリオンが移設され、《交流施設 ほんまるの家》(2017)として活躍していた。


SALHAUS《陸前高田市立高田東中学校》


隈研吾《陸前高田アムウェイハウス まちの縁側》


伊東豊雄《交流施設 ほんまるの家》

最大の目玉は、内藤廣による《東日本大震災津波伝承館(いわてTSUNAMIメモリアル)》を含む《高田松原津波復興祈念公園 国営追悼・祈念施設》(2019)だろう。ランドスケープや震災遺構はまだ整備されていたが、一帯がすべて完成すれば、間違いなく彼の代表作になるはずだ。建築と公園の強い中心軸はややクラシックであり、丹下健三の《広島平和記念資料館》と比較したくなるが、一方で土木的なスケールのランドスケープや、防潮堤を効果的に組み込むデザインなどは現代的だ。また道の駅を併設しているのも、今風である。


内藤廣、《東日本大震災津波伝承館(いわてTSUNAMIメモリアル)》


《いわてTSUNAMIメモリアル》の正面玄関に向かう通路

今回、津波伝承館など、311の記憶に関する施設をいくつかまわったが、予算や規模にばらつきがあり、内容やクオリティもばらばらだった。中国の四川地震の記念館はどれも同じ内容と形式だったり、ニューヨークの《911メモリアル》は記録への執念を感じたが、そうしたしつこさがなく、統一感のなさが逆に日本らしいのかもしれない。ただ、やはり震災遺構を空間ごと残したものは、圧倒的な体験と情報密度をもつ。とくに津波の被害を受けた《旧向洋高校校舎》をまるごと残し、その内外を歩くことができる気仙沼市の《東日本大震災遺構・伝承館》(2019)は印象的だった。


《旧向洋高校校舎》突っ込んだ自動車が3階に残る《東日本大震災遺構・伝承館》

2020/08/12(水)(五十嵐太郎)

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