artscapeレビュー
M meets M 村野藤吾展 槇 文彦展
2020年12月01日号
会期:2020/10/30~2020/12/27
BankART KAIKO、BankART Temporary[神奈川県]
2004年に馬車道の旧第一銀行からスタートしたBankARTが、今春再び第一銀行(Temporary)に戻り、秋には道路を挟んだ旧帝蚕倉庫の1フロア(KAIKO)も借りて再出発。その二つを使った第一弾が「村野藤吾展」と「槇文彦展」だ。両展合わせて「M meets M」。なぜこの二人が出会うのかというと、すぐ近くにオープンしたばかりの横浜市庁舎の設計および旧第一銀行のリノベーションが槇の仕事であり、関内駅前にあった旧市庁舎が村野の設計だからだ。ちなみにBankART KAIKOは、帝蚕倉庫がかつて輸出の主力だった蚕糸(生糸)の倉庫だったことから「蚕(かいこ)」をとったもので、横浜が日本で最初に「開港」したこともダブらせたネーミング。今回はさらに「回顧」の意味もトリプらせている。
そのKAIKOでの「村野展」は、開港100周年事業として起案された旧市庁舎(1959)を中心に、関西の尼崎市庁舎や宝塚市庁舎、天井がジンベエザメな日生劇場を擁する日本生命日比谷ビル、現在は目黒区役所として使われている千代田生命本社ビル、瀟洒という言葉がしっくりくる白亜の新高輪プリンスホテルなどの写真、図面、マケット、家具などを展示。モダニズムから和風建築まで幅の広さに驚く。ほかにも、坂倉準三の神奈川県立近代美術館や関内のシルクセンター国際貿易観光会館、前川國男の神奈川県立図書館・音楽堂など周辺の名建築も紹介。
Temporaryでの「槇展」は、横浜の新市庁舎を中心に、代官山ヒルサイドテラス、東京体育館、京都国立近代美術館、スパイラル(ワコールアートセンター)、幕張メッセなど、ジャンルは村野以上に幅広い。さらに、サンフランシスコのイエルバ・ブエナ芸術センター、マサチューセッツ工科大学新メディア研究所、深圳海上世界文化芸術中心など、海外のプロジェクトもたくさん手がけている。こうしてながめると、建築ごとにスタイルが変幻自在だった村野に対し、槇はどこでも直線と円形の組み合わせを基本としていることがわかる。これが近代建築(モダン)と現代建築(コンテンポラリー)の違いだろうか。でも共通しているのは、二人とも美しいプロポーションにこだわったことだ。
2020/11/06(金)(村田真)