2021年09月15日号
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artscapeレビュー

改組 新 第7回日展

2020年12月01日号

会期:2020/10/30~2020/11/22

国立新美術館[東京都]

日展は2000年から見始めたが、全体の印象は毎年ほとんど変わっていない。20年前の作品と今年の作品を入れ替えても、たぶん気がつかないと思う。20年1日のごとし。これが日展の最大の強みだが(もちろん最大の弱みでもあるが)、まったく変化がないわけじゃない。特に不正審査が表面化した2013年以降、なんとなく柔らかくなっている。というより「ゆるく」または「ぬるく」なっているというべきか。

日本画の洋画化、洋画の日本画化は毎年感じることだが、いつまで「洋画」という死語を使い、いつまで「日本画」と分けるつもりだろうか。ある観客が洋画の展示室を見渡して「暗い」とつぶやいていた。もちろん照明の問題ではなく作品についてだが、それがその部屋だけの印象なのか、洋画全体のことなのかはわからない。でもいわれてみれば確かに暗い。日本画と比べても暗く感じる。その原因は人物画の表情にあるんじゃないか。日本画に比べて洋画のほうが圧倒的に人物画が多いが、ほぼどれも無表情で、ポーズも静止している。躍動感がなく、なにか淀んでいる。もっといえば、死んでいる。死臭が漂う。それが「暗さ」の原因ではないか。

さて、今年はコロナに明け、コロナに暮れてきたが、不思議なことにマスクを描いた作品がほとんどない。作品点数は日本画285点、洋画718点だが、日本画でマスクが描かれているのは、岩田壮平《何も見えない》、能島千明《不安》、川崎鈴彦《古寺風声》、有沢昱由《メディカルⅥ》の4点だけ(ちなみに岩田の作品は写真画像を使っているように見える異色作だが、これでも日本画なのか)。さらに洋画では、曽剣雄のガスマスクをつけた自画像《2020》のたった1点のみ。700点以上あるなかで今年を象徴する作品がわずか1点しかないのだ。あとは地中海の風景だったり、田舎の年寄りだったり、古典絵画の前の女性像だったり、アロワナやペンギンだったり……。いったい、いつの時代に生きているのか? どこの世界を描いているのか?

彫刻ものぞいてみたら、作品点数222点のうち人物像が95パーセントくらいを占めているにもかかわらず、マスクをつけた像は西沢明比児《テレヴィ・ウイルス》の1点だけ。観客は全員マスクをしているのに、その対比が鮮やかだった。そういえば、確か東日本大震災後の2011年も震災ネタ、原発ネタはほぼ皆無だったなあ。さすが日展、世の動きに動じず、超然としてらっしゃる。

2020/10/29(木)(村田真)

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