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artscapeレビュー

大道兄弟『My name is my name is…』

2021年12月15日号

発行所:桜の花本舗

発行日:2021/09/16

毎月、たくさんの写真集が送られてくる。だが、ほとんどが自費出版のそれらの写真集のなかで、何か書いてみたいと思わせるものはそれほど多くない。大道兄弟という未知の二人組が、自分たちの写真をまとめた『My name is my name is…』も、最初はなんとなく見過ごしていたのだが、そのうちじわじわと視界に入ってきて、気になる一冊として浮上していた。

どうやら二人は1994年山梨県生まれ、大阪府堺市育ちの双子の兄弟(YukiとKoki)のようだ。赤々舎などでアルバイトをしながら、写真を撮り続け、Zineを既に40冊余り出している。『My name is my name is…』が最初の本格的な写真集である。モノクロ、カラーが入り混じり、被写体との距離感もバラバラだが、どこか共通の質感を感じさせる写真が並ぶ。特に、人の写真にその眼差しの質がよく表われていて、真っ直ぐに向き合いつつも、暴力的にねじ伏せようとはしていない。共感をベースにしながらも、なかなかそれを伝えることができないもどかしさと、コミュニケーションへの切実な渇望が写真に表われている。と思うと、そっけない、だが体温を感じさせるモノの写真もあり、被写体をあまり厳密に定めてはいないようだ。まだ海のものとも山のものともつかないが、写真を通じて世界と深くかかわっていこうとする、ポジティブな意欲が伝わってくる写真が多かった。

どれがYukiの写真でどれがKokiの写真かは、あえて明確にしていない。「兄弟」というユニットに徹することで、個人作業を超えた共同性が芽生えつつあるのが逆に興味深い。可能性を感じさせる一冊だった。

2021/12/07(火)(飯沢耕太郎)

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