2022年07月01日号
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artscapeレビュー

遥かなる都市展

2021年12月15日号

会期:2021/11/17~2021/12/05

BankART Station[神奈川県]

会場には映像を投影する9面のスクリーンのみ(そのうち4面は、2つの壁の表裏=両面を使用)。都市への批評的な提案をテーマとしながら、立体的な表現がないので、物足りないのではないかと思ったが、杞憂に終わった。1960年代や70年代に撮影された、興味深い作品がいくつか含まれており、しかも全体を鑑賞できるような各作品が適度な長さの映像だったのもありがたい。なお、この展示は「横浜フランス月間2021」のイベントとして開催されたものだが、前半は特にイタリア人が多く、後半もオーストリアやアメリカの建築家やアーティストを含み、むしろフランス人は少数派である。さて、建築の観点からは、いずれも「アーキラボ:建築・都市・アートの新たな実験展 1950-2005」 (森美術館、2004-2005)などでオブジェとしては見たことがあったが、アーキズームの《ノーストップ・シティ》(1971)やスーパースタジオの「基本的な行為:人生《スーパーサーフェス》(1972)の映像を初めて実見したのが大きな収穫だった。後者は地球の表面を均質なスーパー・グリッドで覆う《コンティニュアス・モニュメント》のプロモーション・ビデオといった趣である。

同時代のラディカルな建築家集団、アーキグラムが映像を制作していたことは、日本でDVD化されたことで知っていたが、アーキズームやスーパースタジオも試みていたわけである。かつてル・コルビュジエはその建築・都市論を映像化し、山本理顕は修士論文のためにアニメーションを制作していた。フィルムの時代における建築家による映像の系譜はまだ全容がわからないので、今後のテーマとなりうるだろう。さて、同展では、ハウス・ルッカー・コーの《イエローハート》(1968)と、フィレンツェ中心部の運動をとりあげたUFOの《都市現象no.6》(1968)が、改めて1968年の文化革命と空気膜のオブジェの強いつながりを示していた。ウーゴ・ラ・ピエトラ《街を取り戻す》(1977)は、ミラノ周辺に生成したセルフビルド的な家屋群を紹介している。またアント・ファームの《メディア・バーン》(1975)は、アメリカのアイコンである自動車とテレビを衝突させるパフォーマンスだった。なるほど、これらの作品は、やはり映像でしか伝えられないものだろう。

2021/11/27(土)(五十嵐太郎)

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