artscapeレビュー
INAXライブミュージアム
2021年12月15日号
INAXライブミュージアム[愛知県]
なかなか足を運ぶ機会がないままになっていた常滑のINAXライブミュージアムをようやく訪れることができた。開放的な敷地において、大正時代の窯と建物、煙突を保存しつつ、中心となる広場のまわりに徐々に建て増していった複数の施設が並ぶ。まず「窯のある広場・資料館」は登録有形文化財に指定された産業遺産の空間を体験できる。ただ、窯のプロジェクションは面白いが、窯そのものを見るために、映像ナシの時間帯ももっと欲しい。そして「世界のタイル博物館」と建築陶器のはじまり館は、さすがのコレクションである。前者は、タイル研究家の山本正之が寄贈したタイルをもとに開設されたもので、一階で空間ごとタイルの表現を体験することができ、二階でさまざまな装飾タイルを楽しむことができる(陶板画も見事)。またミュージアムショップの近くでは、古便器のコレクションも展示していた。ちなみに、同館にはレストランが併設されており、事前に薪釜で焼くピザのお店があると知っていたら、ここでランチを食べたのにと後悔した。
「建築陶器のはじまりの館」は、日本の近代建築を飾った数々のテラコッタを紹介する。注目すべきは、それらが実物であること。言い換えると、ライトが設計した帝国ホテル旧本館や京都府立図書館など、取り壊されたり、改修されたりした建築から譲り受けたものだ。ともあれ、建築の上部についているとわからないが、地上レベルに降ろされると、かなり大きいこともよくわかる。横浜松坂屋本館や大阪ビル1号館など、とくに「テラコッタパーク」の屋外陳列は壮観だ。また「土・どろんこ館」では、旧丸栄百貨店本館、中日ビル(中部日本ビルディング)などを紹介する「壮観!ナゴヤ・モザイク壁画時代」展を開催中である。最近、解体されたばかりの村野藤吾による丸栄百貨店の壁画や中日ビルの天井画のほか、北川民次や脇田和の原画による作品などを紹介したものだ。モザイク壁画は、一部現物もあるが、現役で使われているものも多く、主に大きな写真のインスタレーションによって会場を構成している。そして「やきもの工房」は、特別に作業現場も見学させてもらったが、これまでにもジオ・ポンティや東京都庭園美術館のタイルの復元に協力しており、科学の実験室のように、色、造形、焼き方などを研究していた。
壮観!ナゴヤ・モザイク壁画時代
会期:2021年11月6日(土)~2022年3月22日(火)
会場:INAXライブミュージアム「土・どろんこ館」企画展示室
(愛知県常滑市奥栄町1-130)
2021/11/19(金)(五十嵐太郎)