2022年07月01日号
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artscapeレビュー

HOKUTO ART PROGRAM ed.1 後編

2021年12月15日号

会期:2021/10/30~2021/12/12

中村キース・ヘリング美術館[山梨県]

いまキース・ヘリング美術館では、40年近く前にぼくがニューヨークで撮ったキース・ヘリングの写真を展示してくれているのだが、なかなかコロナ禍が収まらず、ようやくタイミングを見計らって行くことができた。ちょうど今週まで「HOKUTO ART PROGRAM」という企画展もやっているし。これは山梨県北杜市にある清春芸術村、中村キース・ヘリング美術館、平山郁夫シルクロード美術館など5つの施設が、「芸術と観光という二つの要素を多面化し、『時間をかけてここに来ていただくことの価値』を磨き続け」ようとの主旨で始めたもの。ここではSIDE COREと脇田玲の2組が出品していた。どちらもキース・ヘリングやグラフィティに関連づけた作品となっている。

SIDE COREは《IC1(Imaginary Collection1)》と題して、高床式の小屋を制作。小屋の床には丸い穴が3カ所開いており、下から首を突っ込んで内部をのぞき見る仕掛けだ。のぞいてみると、室内にはストリート系のペインティングや版画がびっしり展示され、ネズミのぬいぐるみやスニーカーの空箱なども置いてある。作者がもらったり買ったりしたコレクションだそうで、3つの穴から見える作品群にはそれぞれ異なる意味が与えられているという。しかしこうして床スレスレの目線で見上げると、なんだか自分がネズミにでもなったような気分。さらに室内にはカメラが据えられ、のぞいた人の顔が外のモニターに映し出される仕掛けなのだ。タイトルの「IC1」はニューヨークのPS1、「イマジナリー・コレクション」はアンドレ・マルローの「空想の美術館」に由来するだろう。グラフィティや美術史の知を盛り込んでいる。


SIDE CORE《IC1(Imaginary Collection1)》 展示風景[筆者撮影]

脇田玲の作品は《アランとキースのために》と題された映像で、電子計算機の開発に関わった数学者のアラン・チューリング(1912-54)と、キース・ヘリング(1958-90)の時を超えた対話の場を創出するもの。チューリングは化学物質が相互に反応して拡散していく形態形成について考察したが、映像はモルフォゲンと呼ばれるその形態形成のパターンが、キースの絵とよく似ていることを示している。原理はさっぱりわからないけど、作品は一目瞭然、点が線になり枝葉のように四方に伸びていく様子は、まさに空間を埋め尽くしていくキースのドローイングそのもの。空間を線で均等に、効率的に埋めようとすると必然的にこういうパターンになるのだ。これはおもしろい。ちなみに2人ともホモセクシュアルだったらしい。

*脇田玲の展示会期:2021年10月16日(土)〜2022年5月8日(日)
 SIDE COREの展示会期:2021年10月30日(土)〜2022年5月8日(日)

2021/12/06(月)(村田真)

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