2022年07月01日号
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artscapeレビュー

ALLNIGHT HAPS 2021「彼は誰の街に立つ」#3 村上慧《広告収入を消化する》

2021年12月15日号

会期:2021/11/13~2021/12/18

東山 アーティスツ・プレイスメント・サービス(HAPS)[京都府]

制度と共謀しつつ、その間隙を突いていかにクリティカルな制度批判を打ち出せるか。

「広告収入を消化する」と題された村上慧の個展は、肉体を資本とする賃金労働と広告装置が支える消費資本主義のシステムを、自らの身体を文字通り駆使して鋭く照射する。

本展は、夜間に路上からガラス越しに鑑賞する展覧会シリーズ「ALLNIGHT HAPS」の一環。スクリーンに映る村上の裸の上半身が「広告ウィンドウ」となり、もうひとつの映像が入れ子状に投影される。「提供」の2文字とともに、HAPS、京都のギャラリーショップや書店、アーティストの明和電機のロゴが表示。事業の紹介、通販サイトの宣伝、テレビショッピングのノリでグッズ販売を行なう広告映像が流れる。



[撮影:前端紗季]



[撮影:前端紗季]


生ける「広告ウィンドウ」となった村上は、同時に、協賛スポンサーから支払われた「広告収入」でデリバリー注文したフードやドリンクを次々と口に運んでいく。消費価値を作り出す広告を、食料に交換して文字通り「消費・消化」する転倒の操作であり、自身の身体を広告媒体にして報酬を得る行為は、労働と資本の本質的関係をシンプルかつ鮮やかに可視化する。私たちは、自らの肉体を資本とする賃金労働に従事し、報酬として得た金銭で生命維持、すなわち資本としての身体を維持し続けているからだ。そして広告産業とは、消費資本主義を駆動させ続ける動力源にほかならない。

村上は、自作した発泡スチロール製の「家」を背負って国内外を歩いて旅するプロジェクト「移住を生活する」においても、都市の路上に身体を開きながら、不動産(家)の所有の観念、定住/移住や公/私の境界線をめぐり、既存の社会経済の構造や管理社会の間隙をユーモラスかつ鋭く問い直してきた。CMのスポンサーがギャラリーやアーティストである本展では、アートと商品経済の皮肉な関係も露呈されている。



[撮影:前端紗季]


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2021/11/14(日)(高嶋慈)

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