artscapeレビュー
カタログ&ブックス | 2022年6月1日号[テーマ:ヨシタケシンスケの視点にシンクロしてしまうかもしれない5冊]
2022年06月01日号
注目の展覧会を訪れる前後にぜひ読みたい、鑑賞体験をより掘り下げ、新たな角度からの示唆を与えてくれる関連書籍やカタログを、artscape編集部が紹介します。
絵本作家として『りんごかもしれない』でデビューして以来、「もしも」の世界の豊かさをさまざまな形で描き続けてきたヨシタケシンスケ氏。世田谷文学館での初の大規模展覧会「ヨシタケシンスケ展かもしれない」(2022年4-7月)の開催も話題のなか、ヨシタケ氏の発想の種が垣間見える、大人も子どもも没入してしまう5冊を選びました。
今月のテーマ:
ヨシタケシンスケの視点にシンクロするかもしれない5冊
1冊目:りんごかもしれない
Point
言わずと知れた2013年刊行の絵本デビュー作。目の前の何の変哲もないりんごに、その中身や構造、味、来歴などすべてに「◯◯かもしれない」という仮説を掛け合わせ、想像力を働かせることで見えてくるいくつもの世界をユーモラスに示してみせた本書の構造は、その後のヨシタケ氏の絵本でも一貫しています。
2冊目:このあと どうしちゃおう
Point
死後の世界はどうなっているの? という問いをタブーにすることなく、むしろワクワクするもうひとつの世界として描いた一冊。自らの両親の他界を経た、日頃から死について気軽に話せた方がいいという想いが本作の出発点だそう。「世の中ふざけながらじゃないと話しあえないこともたくさんある」(付属のリーフレットより)。
3冊目:ヨチヨチ父 とまどう日々
Point
父親という立場になって初めて知る感覚を捉えた、ヨシタケ氏自身の視点からのイラストエッセイ。絵に添えられた率直で正直な言葉を押して、きれいごとばかりではない日常、ひいては社会のなかで育児が置かれているどうしようもない現実の姿に共感を抱くお父さんやお母さんはたくさんいるはず。
4冊目:あるかしら書店
Point
ある町の本屋を舞台に、「こんな本あるかしら?」というお客さんの問いかけから繰り広げられる、「こんな『本にまつわる本』あったらいいな」という妄想のオンパレード。読んでいるうちに何より強く感じられるのは、本や書店への愛とロマン。だんだん本屋に行きたくなってくる、子どもも大人もたっぷり没入できる一冊です。
5冊目:思わず考えちゃう
Point
ヨシタケ氏が日常的に描き留めているスケッチと、それを描いたとき考えていたこと。哲学的な問いにつながりそうな話題もあれば、言語化までは至っていなかった生活の「あるある」もあり、その粒度の幅広さにどんどん読み進めてしまうミニエッセイの集積。この一貫した肩の力の抜け具合、見習いたくなってしまいます。
ヨシタケシンスケ展かもしれない
会期:2022年4月9日(土)~7月3日(日) ※日時指定制
会場:世田谷文学館(東京都世田谷区南烏山1-10-10)
公式サイト:https://yoshitake-ten.exhibit.jp/
『ヨシタケシンスケ展かもしれない公式図録 こっちだったかもしれない』
展覧会公式図録は、ヨシタケシンスケ自身が描き下ろしたコンテンツを豊富に収録。絵本のためのラフやアイデア、絵本原画をはじめ、展覧会のために描いた未公開スケッチを1000点以上収録。さらに、展覧会オリジナルグッズを自ら考案したスケッチは170点以上に。展覧会の裏話を含む5500字インタビューや、絵本作家デビューから10年の軌跡をたどる専門家による絵本論も必読です。
◎展示会場で販売中。
2022/06/01(水)(artscape編集部)