2022年11月15日号
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artscapeレビュー

スコットランド国立美術館 THE GREATS 美の巨匠たち

2022年06月01日号

会期:2022/04/22~2022/07/03

東京都美術館[東京都]

スコットランド国立美術館の中核をなすナショナル・ギャラリーには、1985年に訪れたことがある。スコットランドをぐるっと回るついでに、フェルメールの最初期の作品《マルタとマリアの家のキリスト》を見に行ったのだが、美術館の規模もコレクションの量と質も、ロンドンのナショナル・ギャラリーの縮小版という印象だった。今回フェルメールは来ていないが、エル・グレコ、ベラスケス、レンブラント、モネ、ゴーガンら有名どころは押さえている。だが、「THE GREATS」というタイトルの割に小品が多く、また小品に佳作が多かったのも事実。

例えばティツィアーノの素描。ティツィアーノは多作・大作で知られているのに素描かよ、なんて思ったら大間違い。多作の割に素描はきわめて少なく、とても貴重なのだ。出品作の《三つの人体の構成》は、3人の人体の特に腕の部分が何度も修正されているため、まるでボッチョーニの動きの表現みたいだ。これは斬新。ファン・ミーリス《リュートを弾く女性》、ヴァトー《スズメの巣泥棒》、ヴュイヤール《仕事場の二人のお針子》は、いずれも縦横20センチ前後の極小サイズながら佳作。これは持ってくるのが楽だ(が、手にとって愛でてみたくなるので盗まれる心配もある)。

逆に、出品作品中最大の作品が1点だけエピローグとして掲げられている。フレデリック・エドウィン・チャーチの《アメリカ側から見たナイアガラの滝》だ。同コレクションのなかでアメリカ人の絵画は珍しいが、起伏の少ないブリテン島にはありえない壮大な風景に惹かれたのだろう。そこにないもの、あってほしいものをあたかもあるかのように現出させるのが絵画の醍醐味であることを、この作品は教えてくれる。たとえ高価な土産物として描かれたとしても。

2022/04/21(木)(村田真)

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