2022年08月01日号
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artscapeレビュー

桜を見る会

2022年06月01日号

会期:2022/04/09~2022/04/30

eitoeiko[東京都]

今年も「桜を見る会」の案内状が届いたので行ってみた。本家の新宿御苑から神楽坂に場所を移した「桜を見る会」も、はや3回目。出品作家は7人、うち女性が5人を占める。勇気ある人たちだ。

ドアを開けて正面に陣取るのは嶋田美子の作品。天井から吊り下げられたピンクの垂れ幕に「ミソジニスト消滅させよう行こう行こう(ギャティギャティ)反嫌悪実行委員会」と書かれ、横に懐かしや中ピ連の榎美沙子のポートレートと、その象徴であるピンクヘルメットを被せた箒などが置いてある。日本のフェミニズム運動と今年生誕100年を迎えた松澤宥へのアイロニカルなオマージュか。「桜を見る会」との関連はピンク色。ピンク関連でいうと、木村了子による軸装の美男画《Beauty of my Dish―桜下男体刺身盛り》もそう。ヌードの美男子の腹の上に鯛刺しが盛られ、鯛の頭が下腹部を覆う構図で、周囲を桜が囲んでいる(ただし葉は桜っぽくない)。いわゆる女体盛りならぬ男体盛りだが、鯛の身と桜の薄ピンク色が呼応して美しい。

サクラという語に反応したのは岡本光博。子どものころなじんだ画材「サクラクレパス」のパッケージをそのクレパスで拡大模写したり、軍用ベルトに弾丸の代わりにクレパスを装着したり、相変わらず批評精神は旺盛だが、「桜を見る会」との関連は希薄だ。逆に一見穏やかながら、じつはもっとも過激に迫っているのが中島りかの作品。壁には赤いバッグが置かれた新宿御苑の写真と中島のステートメント、床にはその赤いバッグが置かれている。ステートメントを読むと、「桜を見る会」が中止になった2020年4月、安倍首相の私邸に女性が不法侵入して逮捕されたが、彼女の持っていたバッグにはナタや小型のガソリン携行缶、ライターなどが入っていたという。中島はそれと同じものをバッグに入れて東京を徘徊したそうだ。いわば容疑者の行動を追体験したわけだが、もし運悪くおまわりさんに職務質問されれば「ちょっと署まで」連れていかれたに違いない。こういうおバカな作品が増えると、世の中もう少し楽しくなるのにね。



右:嶋田美子《中ピ連を招魂する》、左:岡本光博《SAKURA CRAY-PAS, SAKRA COUPY-PENCIL, and HONTOno》
[筆者撮影]

2022/04/14(木)(村田真)

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