2022年08月01日号
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artscapeレビュー

ポーラ美術館開館20周年記念展 モネからリヒターへ ─ 新収蔵作品を中心に

2022年06月01日号

会期:2022/04/09~2022/09/06

ポーラ美術館[神奈川県]

新収蔵作品のお披露目を兼ねた開館20周年を記念するコレクション展。「モネからリヒターへ」の「モネ」がポーラ美術館の看板だとすれば、「リヒター」は新収蔵作品の目玉といったところか。両者とも近年オークションでは数十億円の値がつけられる新旧の巨匠とはいえ、このふたりを並列するのはいささか違和感がある。なんというか、モネの行き着く先がリヒターかよみたいな。ある意味当たってるけど、それでいいのかみたいな。そんな違和感を補うキーワードが「光」だ。モネをはじめ印象派を中心とするコレクションも、まばゆいリヒターの絵画も、箱根の自然に囲まれた美術館の環境も「光」にあふれているし。でもそれをいっちゃあ、どんな美術作品だって光と無縁ではありえないけど。

むしろ「モネからリヒターへ」を、「近代から現代へ」という美術館の路線変更宣言と読むべきかもしれない。5年ほど前から若手美術家のためのアトリウムギャラリーを開設したり、「シンコペーション」展や「ロニ・ホーン」展を開いたり、創設者・鈴木常司の急逝後しばらく休止していた作品収集を現代美術中心に再開するなど、明らかに比重を現代に移してきている。でもそれを声高にいうと、印象派目当ての観客から敬遠されかねない。だから当たり障りのない「光」を共通テーマに据えたってわけ。そういえば20年前の開館記念展も「光のなかの女たち」だったし。

邪推はこのくらいにして、会場を回ってみよう。展示は鈴木の収集した近代美術を軸とする旧蔵作品中心の1部と、現代美術を中心とする新収蔵品の2部構成で、計20章に分かれている。第1章は開館記念展と同じ「光のなかの女たち」で、マネ、ルノワールら鈴木コレクションのほか、モリゾやドローネーら新収蔵作品も公開。以下「水の風景、きらめく光」「揺らぐ静物」と続くが、驚くのはモネの《睡蓮の池》とリヒターの《抽象絵画(649-2)》を並べていること。なるほど、サイズは違えど両者ともほぼ正方形だし、さまざまな色彩が溶け込んだ《睡蓮の池》の部分を100倍くらいに拡大してみれば、《抽象絵画(649-2)》になるかもしれない。でも俗物のぼくは2点合わせて100億は下らないなどと思ったりするわけです。

第5章から日本の近代絵画が始まるが、おやっと思ったのは、ヴラマンクと里見勝蔵や佐伯祐三が並んでいること。フォーヴィスムの影響関係を示そうとしたのはわかるが、これはもう影響というレベルではなくパクリ。特にヴラマンクと里見はどっちがどっちか区別がつかない。余談だが、大阪中之島美術館の開館記念展ではこの3者に加えユトリロも並んでいたから、もうどれがだれの作品やら。

第2部の現代美術を軸とする新収蔵作品が始まるのは第10章からで、山田正亮の時代の異なる3作品を始め、田中敦子、李禹煥、海外ではモーリス・ルイス、ドナルド・ジャッド、アニッシュ・カプーアなどよく集めたもんだ。屋外には「森の遊歩道」に、企画展で招いたスーザン・フィリップスのサウンド・インスタレーションや、ロニ・ホーンのガラス彫刻が常設展示され、自然豊かなポーラ美術館の呼び物となっている。ところで、近年の収集作品にはこのふたりに加え、ヘレン・フランケンサーラー、ブリジット・ライリー、パット・ステア、三島喜美代ら女性作家が多い。鈴木コレクションには女性作家の作品がほとんどなかったことを考えれば、このへんにも時代の流れを感じることができる。

2022/04/09(土)(村田真)

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