artscapeレビュー

「都市デザイン 横浜」展 ~個性と魅⼒あるまちをつくる~

2022年06月01日号

会期:2022/03/05~2022/04/24

BankART KAIKO[神奈川県]

昨年度末までだった会期が約1カ月延びたので、もういちど見にいく。延長されたのは予想以上に人が入っているからでもあるが、なによりBankART1929代表の池田修が3月16日に急逝したため、スケジュールを調整し直さなければならならず、会場が空いたからだ。また、池田は横浜の都市デザインにひとかたならぬ愛着を抱いていたので、結果的に故人の追悼の意味も帯びることになった。彼にとってはこれが最後の仕事になってしまったが、コロナが収まり始めたこともあって動員もカタログの売り上げも伸び、池田も喜んでいたのがなによりの救いだ。

展覧会は、飛鳥田一雄市政の1971年に横浜市に「都市デザイン担当」が誕生してから現在まで、半世紀におよぶ都市デザインの歴史を振り返るもの。横浜の都市デザインといえば、さして興味のないぼくでもその基礎を築いたアーバンデザイナー田村明の名前を知っているくらいには全国的な知名度を有する。住みたい街のランキングで横浜市が何年もトップの座を占めるのは、もともと好条件がそろっているとはいえ、その条件を生かして都市イメージを高めてきた彼らの努力のおかげといっても過言ではない。その活動はいわゆる都市計画や景観デザインにとどまらず、歴史的建造物の保存や文化芸術の促進まで幅広く、もちろんBankARTの創設とその後の展開にも深い関わりがある。池田の思い入れが強かったのもそれゆえだ。

展示は、横浜開港に始まる都市形成史から、飛鳥田の打ち上げた「六大事業」、都市デザイン室の誕生、歴史資産の保全活用、BankARTを含む文化芸術創造都市構想までカバー。こうした都市デザイン展の場合、絵画や彫刻と違って実物を持ってくるわけにはいかないので、図面やマケット、グラフ、写真などの資料類が大半を占めることになる。今回はそうした資料を満載した分厚いカタログがつくられたので、正直いうとそちらを見たほうが早いし、わかりやすい。ひょっとしたら都市デザイン室の記録としてカタログをつくるのがメインで、その口実として展覧会を開いたのではないかとさえ思えてくるが、そうではなく、おそらく新しい市庁舎の前に移転したBankART KAIKOに足を運ばせることで、「クリエイティブシティ」を掲げた横浜の最新の姿を見てもらいたかったに違いない。


公式サイト:https://toshide50.com

2022/04/17(日)(村田真)

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