artscapeレビュー

すべて未知の世界へ ─ GUTAI 分化と統合

2022年12月01日号

会期:2022/10/22~2023/01/09

大阪中之島美術館、国立国際美術館[大阪府]

今春開館したばかりの大阪中之島美術館と、隣接する国立国際美術館の初の共同企画による両館を使った大規模な「具体」展。この2館が共同で「具体」展を開くのは、単に場所が隣接しているので便利だからというだけではない。具体美術協会の活動拠点だったグタイピナコテカが、両館にほど近い中之島3丁目にあったという縁にもよるそうだ。

しかしひとつのグループあるいは運動体の展示を2館に分けて行なうとき、どのような分け方が適切だろうか。作家別か、時代順か、作品の形式で分類するか。いずれにしろ片方しか見られなかった人にはハンパ感が残る。両館合わせてひとつの展覧会にしたいところだが、国立と公立なので管轄が違うし、料金体系も異なるため、いちおう独立した展覧会にしたいらしい。そこで選ばれたのが、タイトルにある「分化」と「統合」という分け方だ。

具体のような前衛グループは、個々のオリジナリティを重視する(分化)一方で、運動体としてひとつの方向性を示さなければならない(統合)という矛盾を抱えてしまう。その2つの方向性をそれぞれのテーマとして展覧会を構成したのだ。つまり1本ずつ別のテーマをもちながら、2本見ればより大きな全体像が把握できるというわけ。なるほどこれなら片方しか見られなくても、ある程度の満足感は得られるだろう。だが実際に見てみると、最初から強烈な作品が目白押しで、「分化」と「統合」のテーマなんぞ吹っ飛んでしまい、2館目はもはやダメ押し状態、同じ作家がまた出てきたとうんざりしてしまった。やはり共同企画、共同開催は難しい。

個々の作品は置いといて、展覧会全体としてもう一つ難しさを感じたのは、展示作品が前衛的であればあるほど、数十年後にそれを回顧するときには古臭く、またおとなしく感じられてしまいがちなこと。それは前衛作品が新しさや未視感を売りにしていただけに、その時代を通り過ぎてしまえば必要以上に色褪せて見えてしまうからだ。その点、同時代の美術動向などに左右されないで制作された作品ほど色褪せず、普遍性を感じさせる。たとえば、多数の円を線で結んだ田中敦子の絵画のように。

また、作品そのものとは別に展示の問題もある。具体は1962年にグタイピナコテカが開館するまでは主に画廊やホール、公園などで発表していたが、記録写真を見ると作品の密度がずいぶん濃い(作品自体の密度ではなく、単位面積あたりの作品密度)。おそらく作品同士の発する摩擦熱も高かったはず。それが美術館の広大な白い壁に「芸術」として余裕を持って再展示されると、牙を抜かれた猛獣とはいわないまでも、コップのなかの嵐程度には冷めて見えるのだ。これは作品のせいではなく、美術館という制度が本来的に抱える矛盾だろう。


公式サイト(大阪中之島美術館):https://nakka-art.jp/exhibition-post/gutai-2022/
公式サイト(国立国際美術館):https://www.nmao.go.jp/events/event/gutai_2022_nakanoshima/

2022/11/02(水)(村田真)

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