artscapeレビュー

北加賀屋

2022年12月01日号

千鳥文化、MASK(MEGA ART STORAGE KITAKAGAYA)[大阪府]

3年ぶりに大阪の北加賀屋を訪れた。dot architectsが昭和30年代の文化住宅をリノベーションした《千鳥文化》は、さらに変化し、ギャラリーとして大きな白い空間や小さい店舗群が出現していた。メイン・エントランスにおけるガラスの吹き抜けは相変わらずカッコいいし、かつての部屋にはアート作品や個性的なお店が入り、ますます魅力を増している。確かに前にうかがったとき、今後はまだ手をつけていないエリアも、改造していくと話を聞いていたが、その通りになっていた。東京では場所の性格を根こそぎ変えてしまう、つまらない大型の再開発が目立つのに対し、おおさか創造千島財団がまちづくりに関与することによって、かつての労働者の住宅に手を加えた《千鳥文化》や《MASK(MEGA ART STORAGE KITAKAGAYA)》(2012)など、これほどユニークな空間が実現可能であることに改めて驚かされる。ちなみに、北加賀屋のエリアでは、京都市立芸術大学の彫刻専攻有志による「サーフィン(ここにあるビーフン)」展を開催しており、マップを確認すると、千鳥文化のほかに周辺の3ヶ所を会場にしていた。



《千鳥文化》のギャラリー




《千鳥文化》


《千鳥文化》から歩いて数分の場所に、dot architectsの事務所がある。これもおそらく工場をリノベーションしたもので、設計はもちろん、多くの資材を備えており、施工の実験や展示のモックアップなどもできる大空間をもつ。まさに設計と現場施工を行なう、dot architectsの特殊な活動スタイルを支える場だった。やはり、ここから徒歩圏で行けるのが、約1000m2の工場・倉庫を大型のアート作品の保管所に改造した《MASK》である。ちょうど、毎年行なわれる一般公開「Open Storage 2022─拡張する収蔵庫─」だったことから、持田敦子の独立した階段や回転する壁のインスタレーション、ならびにこれまでの作品紹介の展示を見ることができた。壁の作品はもともと太田市美術館・図書館でも発表されたものだが、《MASK》のシャッターを用いて、《拓く》(2021)が制作された。なお、巨大な空間では、その背後にヤノベケンジの《サンチャイルド》(2011)ほか、やなぎみわ、名和晃平、金氏徹平、宇治野宗輝らの見覚えのある作品と再会した。もっとも、美術館のホワイトキューブで鑑賞するのとは、全然違う環境ゆえに、新鮮な見え方を誘発する。とくにメタリックな作品は、相性が良いように思われた。



dot architectsの事務所




MASK 持田敦子の回転する壁




持田敦子の階段からMASKの奥を見る




持田敦子の作品紹介




ヤノベケンジや名和晃平の作品を収蔵


「Open Storage 2022-拡張する収蔵庫-」

会期:2022年10月14日(金)〜10月16日(日)、10月21日(金)〜10月23日(日)
会場:MASK(MEGA ART STORAGE KITAKAGAYA)(大阪府大阪市住之江区北加賀屋5-4-48)


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