artscapeレビュー

アンディ・ウォーホル・キョウト


2022年12月01日号

会期:2022/09/17~2023/02/12

京都市京セラ美術館[京都府]

出品作品200余点うち100点以上が日本初公開、半年に及ぶ超ロングラン、そして京都だけの単独開催という異例の展覧会。とりわけタイトルに表われているように、ウォーホルと京都とのつながりを強調しているのが最大の売りだ。

会場に入ると、初期の商業デザイナー時代のイラストに続き、1956年に世界一周旅行で訪れた日本でのスケッチや写真、絵葉書、パンフレットなどが公開されている。まだポップアーティストとして名をなす前に、ボーイフレンドとともに行った私的旅行で、約2カ月に及ぶ日程のうち2週間を日本に費やし、東京、日光、京都、奈良、熱海、鎌倉などに遊んだ。なかでも京都観光に刺激を受けた、というのは展覧会主催者の我田引水ではなく、当時の西洋人としてはごく普通の反応かもしれない。ウォーホルは訪問先でスケッチしまくっていたらしく、特に京都で描いた舞妓や僧侶、清水寺など余白の大きな線描は魅力的だ。

このときの日本旅行、京都体験がその後のウォーホル作品にどのような影響を与えたのだろう。たとえば、デザイナー時代に見られる金箔の使用や、ポップアート時代に顕著な同じモチーフの繰り返しは、京都で見た三十三間堂にある千体の観音像に感化されたものではないかとの指摘がある。また、1960年代のウォーホルの代表作のひとつ「花」シリーズは、日本の押し花や生花にヒントを得たものだといわれている。いささか割り引いて聞かなければならないが、限定的ながらも影響を受けたことは事実だろう。ウォーホルは1974年の2度目の来日時に、「日本風になろうと努力している」「日本的なものはなんでも好きだ」などと語っているが、これは彼特有のリップサービス。本当のところはわからない(ただ日本料理が好きだったことは間違いないらしい)。

展示は《マリリン》《キャンベル・スープ》《毛沢東》などおなじみのシリーズもあるが、ときおり顔を出す坂本龍一のポートレートや岸田今日子と仲谷昇を映した映像により、日本とのつながりに引き戻される。そして《電気椅子》《頭蓋骨》《最後の晩餐》など死を予感させる作品が続き、さてこの次はどんな展開になるのかと期待したら、もう出口だった。あれ? もう終わり? なんか尻切れとんぼだな。考えてみれば「死」のテーマで終わるのはごく真っ当な構成のはずだが、なんか物足りない気がする。マリリンやエルヴィスの顔が繰り返される華やかな巨大作品が少なく、見慣れない作品や資料が多かったせいだろうか。でもこのあっけない幕切れがウォーホルらしくもあるけれど。

2022/11/01(火)(村田真)

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