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挑発関係=中平卓馬×森山大道

2023年09月15日号

会期:2023/07/15~2023/09/24

神奈川県立近代美術館 葉山館[神奈川県]

偶然がどうみても偶然と思えなくなることが時々あるが、森山大道と中平卓馬が1960年代後半の一時期、ともに神奈川県逗子に住んでいたというのもそのひとつだろう。近所同士だった二人は、ともに示し合わせて海に泳ぎに行ったり、喫茶店で長い時間をともに過ごしたりしていた。森山は細江英公のアシスタントを辞めてフリーになり、中平も『現代の眼』の編集部を離れて、写真家として再出発しようとしていた。いうまでもなく、当時はまだ無名だった二人は、その数年後には日本の写真シーンにフロント・ランナーとして躍り出ていくことになる。

今回、神奈川県立近代美術館 葉山で開催された本展は、その森山と中平の写真をめぐるせめぎ合い=「挑発関係」を1960年代から現在まであらためて辿り直そうとする企画である。展示の構成は「《無言劇》『来たるべき言葉のために』」「寺山修司と/の『現代の眼』『カメラ毎日』『にっぽん劇場写真帖』」「『路上』そして『プロヴォーク』」「『写真よさようなら』『なぜ、植物図鑑か』」「『Adieu á X』『光と影』」「『記録』『Documentary』」「Nへの手紙」の7部から成り、ヴィンテージ・プリントを含む写真作品・約100点、書籍・約50点のほかに、森山の写真誌『記録』全54冊などのヴィジュアル資料がスライド上映されていた。

盛り沢山の、充実した展示であることは間違いないが、それ以上に彼らのスリリングな「挑発関係」が、日本の写真表現の最も輝かしい一時代を作り上げ、その影響力が現在にまで及んでいることに思いを馳せざるをえない。森山も中平も、それぞれ微妙な角度の違いはあるものの、写真−私−世界の関係のあり方をぎりぎりまで問い詰め、写真家であり続けることのロールモデルを作り上げていったのではないだろうか。そこには同時に、20世紀後半から21世紀にかけて、とりわけ1960〜90年代の日本の現実が、直裁に、これ以上ないほどのなまなましい実感を伴って切りとられているようにも感じる。


公式サイト:http://www.moma.pref.kanagawa.jp/exhibition/2023-provocative-relationship

2023/07/25(火)(飯沢耕太郎)

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