artscapeレビュー
レオナール・フジタ展──ポーラ美術館コレクションを中心に
2013年10月15日号
会期:2013/08/10~2013/10/14
Bunkamuraザ・ミュージアム[東京都]
「ポーラ美術館コレクションを中心に」とあるように、出品作品の大半がポーラ美術館から来ている。とくに小さなボードに描かれた100点近い「小さな職人たち」シリーズを含め、戦後の作品はほとんどポーラのもの。戦前の作品でも、初期のものやフジタと同時代の画家の作品はポーラのコレクションだ。結局もっとも人気の高い20年代の作品だけはほかの美術館から借りている。ポーラがフジタを集め出したころにはすでに各地の美術館に収まっていたんだろう。戦争画は1点もないが、戦前と戦後で、というより戦争画以前と以後とで連続性と非連続性が見られるのが興味深い。連続性は、あいだに戦争画を描いたとは思えない繊細な線描と淡い色彩を主調とする甘美な画面だが、非連続性は、にもかかわらず戦前のフラットな装飾的画面に対し、戦後は立体感とリアリティが増してきたこと。これは明らかに戦争画の描写の名残だろう。それゆえに、甘美な20年代に戻りたいけど戻れないもどかしさみたいなものが、戦後のフジタを特徴づけているように感じる。
2013/09/29(日)(村田真)