artscapeレビュー

ミニマル/ポストミニマル──1970年代以降の絵画と彫刻

2013年03月15日号

会期:2013/02/24~2013/04/07

宇都宮美術館[栃木県]

県立美術館から宇都宮美術館に行くには、いったんバスで駅に戻り、もういちどバスに乗り換えなければならないのだが、本数が少ないので1本逃すと1時間くらい待たなければならない。実際1本逃してしまったためエライ目に会った。まあいいや。「ミニマル/ポストミニマル」は、70年代とそれ以降にスポットを当てた谷新館長(よく間違えられるらしいが、谷・新館長ではなく、谷新・館長)みずから渾身の力をふりしぼった(たぶん)企画。70年代といえば先ごろ埼玉近美でも「日本の70年代」展が開かれたばかりだが、埼玉がサブカルチャーにかなりのスペースを割いていたのに対し、宇都宮は美術のみ、というより絵画・彫刻のみ10人の作家に絞り込んだため、日本の現代美術の変遷がよくわかる展示だった。出品は、堀浩哉、辰野登恵子、中村一美、戸谷成雄、遠藤利克といった面々。展示は作家別でも時代順でもなく、70~80年代とか90年代とか大きな時代のくくりのなかで作家ごとに並べているので(だから同じ作家が何度も出てくる)、通時的にも共時的にもわかりやすい構成となっている。だいたいみんな70年代にミニマリズム(またはもの派)の桎梏・葛藤から出発し、80年代以降に表現性や象徴性を獲得し、近年それを深化させている。もう4半世紀ほど前、西武美術館で「もの派とポストもの派の展開」という展覧会が開かれたが、「ポストミニマル」は「ポストもの派」と重なる部分が多く、今回は「その後のポストもの派の展開」展といいかえてもいいくらいだ。そこでひとつわからないのが、なぜ90年代以降に登場した荒井経や薄久保香を入れたのかということ。それ以前の世代との比較対象としてはありかもしれないが、唐突感は否めない。ともあれ、70年代に批評家としてデビューした谷新(当時は「たにあらた」の表記だった)館長の総括・集大成ともいうべき力作。

2013/02/23(土)(村田真)

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